ヨシイコウタ

アスファルトのヨシイコウタのレビュー・感想・評価

アスファルト(2015年製作の映画)
3.9
とても面白かったです。評価が高いのも頷けます。映画において描かれる「空」が好きな人は、序盤でぐっと入り込めるはず。

まず「宇宙と団地」という、ある意味対極に位置するような舞台の構図がとてもユニークで、惹きつけられる。果てなく無限に広がり続ける宇宙と、すでに完全に完結していてエレベーターの不具合が悩みの種の団地。それだけしか出てこないわけではありませんが、それらが配置されているということだけで興味をそそられる方も多いんじゃないでしょうか。

作品を構成するパーツが、お互いにぴったりと重なり合って心地よい世界を作り出していました。色彩、音楽、登場人物、コミュニケーションなど、すべて地に足がついている感じがするというか、浮いてしまっているものがないので終始安心して観られます。作品の随所で「奇妙な音」がどこからか聞こえてくるのですが、それもうまい具合に作品に張りを与えていたし、それの決着のつけ方も面白かった。

どこかさみしくて切実な匂いのする独特のユーモアが、雲がゆったり流れていく空模様ような作品世界を特別なものに仕上げていました。そこまで重くはないけど軽すぎもしない、ちょうどいい加減なおかけで、抵抗なく心にしみてきます。僕は黙ってそのさみしさに浸りましたが、シニアの方々はしょっちゅう普通に声出して笑っていたので、それぞれの楽しみ方ができるのかも。

最後にこれは作品に関係ありませんが、上映開始後に劇場に入るのは百歩いや二百万歩譲ってゆるすとして、そのあとべらべら喋るだの、騒がしい動作や音で席を探すだのするのはほんとにやめてほしい。すでに席に座っている側は、そういう人たちの顔面をくしゃくしゃに丸めた原稿用紙みたいにへしゃげるまで殴り飛ばしたいと思っています(半分冗談)。