蛙

サイドウェイの蛙のレビュー・感想・評価

サイドウェイ(2004年製作の映画)
3.5
ミドルエイジクライシスとマスキュリニティのお話。

離婚した妻が忘れられずジメジメした生活を続ける英語教師マイルズ。結婚を目前に控えた元俳優の友人ジャックとワイナリーを巡るバチュラーパーティーに。

2人のデコボコなやり取りが面白い!他の人とは極力関わらず純粋にワインを楽しみたいマイルズの陰キャぷりと、結婚前パーティーお決まりの女遊びで盛り上がりたいジャック。こんな2人が一緒に居て、ズレた会話がうまれない訳が無い。「何すんだ!」「だって仕方ないだろ!」のやり取りを観ているだけで面白いし、長年の腐れ縁を感じさせるのも微笑ましい。

弱者男性、日本なら(古い使い方での)オタク、陰キャ、アメリカならナード、ギーグ、その描写も誠実でリアルを感じる。とにかく知識で身を固める、その知識を褒められるとのぼせ上がる、酔っ払って元妻(彼女)に電話する。観ていると何かを思い出して、ギャー!と叫びそうに、意味もなく立ち上がりそうになる。そこに中年問題が絡んで更にこじらせが深まって。(こじらせの象徴のあのアイテムの処理が好感度高い!)

しかし、ずっと楽しく観れたかと言われるとそうでも無くて。論理的には理解できても、感覚的におや?と思うところが少なくなかった。例を出すと、基本マイルズの成長物語なのだけど、その指標としているのが女性との恋愛と言うのに時代性を感じた。対比としてのジャックのキャラクターにも眉をひそめてしまうし、2人の関係性も、もう一歩踏み込んだケミストリーが観たかった。

この作品が公開された当時よりも、特にme too以降、より活性化したフェミニズム論争。それと共に論じられる場面が増えてきた男性性問題。日本ではまだまだ認識が広まっているとは思えませんが、アメリカでは20年前に既に一石投じた作品が評価されている事に驚きます。アレクサンダー・ペイン監督の新作も楽しみです😌
蛙