しの田

リトル・マーメイドのしの田のネタバレレビュー・内容・結末

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 仕事終わり、レイトショー、吹き替え、公開初日!!!!

 さいっこうでした……✨✨

 ポリコレの匂い立つ大きな改変要素はあるものの、しっかり整合性がとられててむしろラブストーリーに深みが増してる。そして! アニメの中のほんの一瞬……でも印象深いシーンの数々が、この作品でもちゃんと再現されていて、なんだか実写の緻密な描写が、「私のリトル・マーメイド」が別の側面を見せてくれた、みたいな……ものすごい再現度、興奮する。

以下、細かい感想。うろ覚え。

 はじまり、意外と抑えた色味の海、ひどく波立っていて、そして題名。バックで流れていたのはなんの曲だったか。とにかく、まずここで鳥肌。とうとう、とうとう、この時が来た!!!!
 そして冒険野郎のエリック王子。見た目アニメ版に寄せてる。あ、マックス!! 落ちた単眼鏡を追って海の中へ……魚の渦や岩のあわい、海藻を掻き分け、上下自由に大画面がうねり、身体がふわふわしてくる感覚。すごすぎ。これだけ30分観ていたい。
 そして! 人魚! トリトンの城へ! なんかすごい音楽!! この流れ、アニメでも観ましたね😏 ビカビカのうろこに覆われた身体が力強く運動して、派手なフリルの尾鰭がふわふわと付いていく。みんな色が違って激派手。派手。
 特別ななんとかナイト、トリトンのもとに集まった7人の海の娘たち、「7つの海」の化身という感じ。対応表を作りたくなる。
 不在の末娘アリエルは、フランダーと一緒に難破船を探索中。フランダー、流石にちょいキモい。太った子どもって感じが無くて、魚すぎる。魚なんだけど。アリエルのビジュアルもかなり変えてる。悲しいことにそれほど赤毛にも見えない。まあ不満がないわけでもないけど、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のカリプソみたい(ここ伏線な)だし、馴染みのない顔貌が神秘的だし、これはこれで悪くない……
 ここで1発、サメとバトル。迫力満点。人魚のアクロバットに真実味があって、こういう生き物という感じで素晴らしい!
 そして、スカットル登場! おい、アイツ、魚を喰ったぞ!! スカットルに喰われたあの名もなき魚と、彼に慈悲もくれてやらない喋る魚フランダーの間には、いったい何があるんだ。グーフィーとプルートか。性別が変わっているけどキャラクターはほぼ同じ。いいね。カミスキーの説明が水中で行われるのは現実的な理由からだろうな。アニメ版のあの都合のいい岩は謎だったもんな。
 そうだ、セバスチャン。彼も思っきしカニになってるけど、これはなかなか良い。アニメ版は謎の生き物という感じだったから、見覚えのある生き物になって安心する。ワタリガニみたいな泳ぐカニ。可愛い。眼が白目と黒目に分かれてるみたいで感情が分かる。そしてトリトン王かっこよ。いや、大塚明夫かっこよ。
 確かここらへんでアースラが出てくる。ビジュアルはかなりいいけど、説明口調なのが気に入らない。この後も度々出てきてご親切に彼女の計画を観客に話してくれるけど、ちょっとげんなり。
 アリエルがトリトンに怒られ、不貞腐れて秘密の洞窟へ。はあ、はあ、はあ、興奮してきた……くる……くる……! 「お父様は何もわかってない。こんな素敵なものを作る人間が、悪いわけないもの(うろ覚え)」嘘、台詞も一致! 実写版アリエルの声、ちゃんとすずきまゆみに似ているよね。

 😭😭😭😭😭😭😭

 鳥肌、鳥肌、鳥肌の連続、それで泣きそうになる。やっぱ実写だとえらい。イラストじゃなくて人間だもの。細かい表情の動きから感情が伝わってきて、アリエルの若い好奇心と強烈な憧れと、身を焼く切なさ。そうだよね、あんな狭い洞窟を舞台にしているのに、上に行ったり下に行ったり、充実した画面変化と歌の中にストーリーをつける構成がすごい。アニメ版の歌よりもスキルフルな感じのアレンジを入れてるのが流行りっぽい。で、最後にかけての盛り上がり、「いつの日か、世界の、果てまでも〜〜ぉ〜〜ぉ〜〜↑↑」って上げるアレンジで天地が揺れる衝撃。ぐわぁぁぁっって感情が高まる表情。
 そして、、伴奏においていかれてひとりぼっちのアリエルの歌声、光に手を伸ばしても、実際は暗い海の底から出られないアリエル(ここの手のショット😭)。「ゆき、たい……」(ここでアニメ版は息を詰める、辛そうに!)「人間の、世界へ〜……」たった一人真っ暗な海の底のアリエル🥺 うおぉ、これを観にきた。これを観にきたんだよ私は……
 で、洞窟の天窓から謎の光。見にいくぞ! 花火だ! うおー、この船には絶対乗りたくないと思わせるような大盛り上がり。ここでなるほどと思ったのが、アリエルが恋に落ちたのは、笛を吹いて犬と遊ぶハンサムではなく、執事と口論をして「外の世界を見たい」と力強く夢を語る若者だった。彼の内面に惹かれて、自分と似た匂いを感じたんだね🥹
 嵐が来て、なんか大変なことになって、エリックはマックスを助け、海に落ちてしまう。アニメとおんなじだぁ……
 アリエルはエリックを入江の浜まで運ぶ。はあ……はあ……また、くるぞ……! 一番好きなシーン、怖いよ私は自分が、期待しすぎてて怖い、垣原みたいに……
 「パート・オブ・ユア・ワールド」のリプライズ。ああ……これを観て確信した。アリエルは魔性の怪物なんだ。岩場の陰で、人間の世界へ行くことを心に決めたあの歌声、明らかにアースラなんかよりも迫力のある、惹き込まれる恐ろしい力がある。だってあのシーンアリエルがなんか怖くて、純真で朗らかな少女にはとても見えないもの。私はここで感極まって泣きました。高らかに力強く歌い上げる人魚、攻撃的とも言える激しい感情の昂り、岩場に白く波が砕け、ピンクの夕暮れ。
 エリックはこの浜辺でアリエルの歌声に魅了されてしまったから、しつこく「自分を助けた女性」を探していたんだと思う。それで、だからこそアリエルは、声無しでエリックの心を手に入れなくてはならなかった。「歌はズルだから」。
 で、確かここらでアンダーザシー。これも見どころ。これぞミュージカル! という感情豊かでひょうきんな歌声の演技。めくるめく魚たちのダンスが、現実的な描写にアレンジされてて、貝柱が踊るとこなんかは最高にキモい。カラフルな生き物が爆発四散するラスト、謎のヒトデとかクラゲとかばっかで微妙にキショい。笑う。海のエネルギーに身を任せるアリエルがメルヘンで可愛い。
 難破船の片付けをするアリエルと姉たち。反抗期→恋をしてる みたいなのは「ん?」と思った。で、セバスチャンのドジでトリトンにバレて、エリック像にご満悦のアリエルは怒られてコレクションも壊されちゃう。トリトンの魔法が、ドワッ、ボォぉオンって感じで気持ちいい。
 で、ついにアースラが動く。ウツボに導かれてアリエルはアースラの城へ。こわ。彼女がキモい手に引っ張られたところとかびくってした。で、「哀れな人々」があって、でも、歌詞の中でほんの短いワードだけどかなり目立つところが変わってた? 契約して、人間になって、急いで海面へ! アニメだったらフランダーが助けてくれたけど、こっちではフランダーが小さすぎて無理。
 ここが大きな変更ポイント! アリエルは浜辺にたどり着いて帆布の服を着てマックスに追われてエリックと出会う……のではなく、漁船の網にかかり王宮に連れてかれてエリックが会いにくる。これは……なぜ変えたんだろう? アニメでは、アリエルの表情と仕草だけで彼女の興奮や考えを表現してたのに、こっちでは心の中で歌を歌っちゃってるし、見知らぬ世界での不安感も描写している。声は出さずに、でもうるさいくらいに大はしゃぎののんきなアリエルが可愛いのに……🤨

 そして、ここで世界観の大きな改変に気づく。舞台は地中海ではなくカリブ海で、海辺の国はブラジル帝国?! まじか。だからアリエルは白人じゃないんだ。むしろ、白人のエリックこそ異質な存在なんだ。当時のあそこらの王族は実際スペイン/ポルトガル人だろ、と思うとこはあるけど、なるほど! と膝を打つ思い。面白い、面白い!
 アリエル親子とエリック親子が対比されている。よりエリックの状況や感情にスポットが当たって、二つの世界が強調されている。アリエルと同じようにエリックも、海のものを集めた秘密の洞窟を持っていて、この設定はかなり良い。素敵。
 来たぞ、馬車デート! アリエルのイカれた手綱捌き、賑やかで色鮮やかな市場に目を輝かせて、エリックと踊って楽しそう。良かったね。
 スカットルが彼らを密林の中のボートへ導く。熱帯雨林!! ものすごいアレンジだ。で、キス・ザ・ガール。お馴染みの3人だけの歌唱でこれも現実度がアップしている演出……なのに、最後フランダーが何故か光り出して水鉄砲を打ち出すのは、急に原作準拠のそぐわぬファンタジーで笑う。でも、セバスチャンのねっとりとした歌は良かった。そして、アリエルの名前を、彼女自身の機転でエリックに伝える改変が素晴らしい。
 そうだ、アリエルの水色のドレス! これはアニメ版に軍配が上がるけど、窮屈なピンクのブーツを脱いでサンダルに履き替える描写は良かった。エリックの帽子を被ったアリエルが可愛い。良かった。
 一方その頃アースラは、予想外にうまくいってる状況にもうひとつの策に出る。薬品をあれでも無いこれでも無いして、あ、そうこれこれ、と腎臓みたいなんを見つける。イカれてていいね。触手とアースラ自身の意識は別なんだなァ

 次の日、スカットルのラップ調? の大ニュース! オリジナル楽曲の中ではこれが一番よかった。エリックのプロポーズ! 大慌てで彼に会いに行くアリエル、しかし彼の隣には黒髪の女性が🤯 ヴァネッサの登場シーンもオカルトくさくてよかったよね。てか、ヴァネッサの声、沢城みゆき? アリエルと同じではないんだ……
 すぐさま結婚式、エリックの執事が急な心変わりを責めているとこで胸が苦しくなる。ショックを受けたアリエルのもとに、ヴァネッサの正体を知ったスカットルがやってくる。ひさしぶりにフランダーが活躍してトリトンに知らせに行く。結婚式の邪魔をしに急行するスカットルとセバスチャン。「ま、ひとりで行くか」クソ笑う。
 ヴァネッサが犬と鳥に襲われて、アリエルが力尽くで声を取り戻そうとする! 突如キャットファイト!! アリエルは声を取り戻すも時遅く人魚に戻ってアースラの高笑い! ドレスからはみ出るアリエルの下半身、アースラ地上で蛸足に戻り、素早く這ってアリエルを奪って海へ身を投げる。ここのすごい勢いのシーンがアニメまんまで嬉しい☺️
 で、ここらへんの展開は曖昧だけど、まさかかなり子供っぽくてチープな演出(だと思ってた)アースラの巨大化をそのまんまやるとは思ってなかった。渦でぐるぐるやるのもそのまんまだった。で、船を突進させて舳先で貫くのもそのまんまだった。
 しかし! 舵を取るのはエリックでなくアリエル?! うん……海の世界という完全アウェイでアリエルを救うエリックという構図だったからこそ美しいのであり、これこそがトリトンが彼を認める理由でもあったと思うけど……🤔
 まあいいや。海の魔女を倒したアリエルは、エリックが海に浮かぶ板に身を寄せたのを確認して、海底に鎮むトライデントを追う。トリトンが復活して、「今一番大切なのは、お前がいるべき場所に戻ったことだ」
 !!!ウソ!!! 悲恋エンド?!! そんな改変!!!! 嘘!!
 ちょっとヒヤリとしたけど、地上の城を眺めるアリエルをみて、彼女に脚を与えるトリトン。「娘がいなくなると淋しくなる」😭😭 水中から出てひげや髪がピッタリしたトリトンが情けなくて可愛い。
 アニメ版の銀色ドレスで歩いてくるアリエルのシーンが無かったのは残念だし、物思いに耽るエリックのもとに戻るのが、マックスの横に音もなく現れるアリエルというのはあまりロマンチックではない。ここは明確に不満。
 でも結婚式は楽しくて素敵っ!!! アップにしたアリエルの髪型がすごーく可愛い! で、2人で旅に出るとか言ってちっちゃい小舟で漕ぎ出す。え、本気? 大海原を、これで?? と思ったけど、よくみたら海の向こうに大きな帆船があり、あれに乗って航海をするのだろう。ふーん。アリエルの嫁入りという結末が気に入らなかったのだろうが、これもこれで大していいとは言えないな。
 櫂を漕ぐエリック、みてはいけないものを見てしまった顔。アリエルが振り向くと、海上に悲しげなジジイの頭。ちょっと笑ってしまった。ほんと、トリトンの愛情は底なし。親子愛も大きなテーマだよね。みんないるよ、みたいなことを言って、浜辺に人魚大集合のシーンはよかった。お姉さんたちがおめかししていて嬉しくなる。感極まったアリエルの表情! 未来を感じる終わり方で、やっぱりこれで良かったんだ。最高だった。
 エンドロール、お話に出てきたアレコレがちょこっと顔を出して楽しい映像が続き、その後、スタッフロールと海中の映像、だんだんと海面に近づいていく。
 はあ……良かった。

 金曜夜遅くの時間、大きめの部屋で半分くらいの座席が埋まっていた。こんな時間にしては多い。残ってるのはアリエル観た勢だけで、なんかみんなで一団になって外に出た。
 6/2の金ローでやってた「リトル・マーメイド」アニメ版も観てからだったから、原作との相違点に気づけて良かった。まあ、これは感想というよりも実況と言ってもいいくらいの長文・乱文になってちゃったけど。映画の時間よりも長い時間をかけてこのレビューを書いてしまった。でも、こうやって思い起こしながら文を作るのも楽しいよね。もう一回、IMAX/字幕のやつを観に行こうと思います。そしたらまた書き足すかも。
しの田

しの田