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リトル・マーメイドのyahのレビュー・感想・評価

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
4.0
IMAX字幕にて鑑賞。

世界的に物議を醸したキャスティングによる差別発言やバッシングの数々を、歌声・演技・音楽・パフォーマンス・ビジュアル・脚本、つまりこの映画に集う全ての要素で吹き飛ばすような、歴史に残る大傑作。

アリス・イン・ワンダーランド(不思議の国のアリス)よりスタートしたディズニー実写化(※正確にはリイマジネーション“再解釈”版)作品群でも、最高峰の出来。

正直、鑑賞前の期待値は「そこそこ」に留めていたため、あまりの完成度に鑑賞から数時間だった今でも衝撃を受けているほどだ。
SNSやYouTubeにて事前公開されていたミュージカルシーンのクリップを何一つ確認せず劇場に向かったのも、功を奏したのかもしれない。

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上映時間135分と、“気持ち長め”な本作。
エンドロール含め83分と大分スッキリとしたアニメ版リトル・マーメイドより、実に52分も尺が伸びている。
エンドロールの所要時間などたかが知れているので、約50分のシーンが新たに加筆されたと捉えてよい。

今回新たに書き下ろされた新曲のミュージカルシーンや、様々な登場人物の“再解釈”により深く深く掘り下げられたバックグラウンドの数々、既存シーンに更なる説得力を持たせる新描写、なにより34年前の価値観から大胆に“切り替えた解釈“の素晴らしさ。

ディティールが変わるだけでここまで愛しい映画に“成長”するのかと、特に中盤の目玉でもある『キス・ザ・ガール』はボッロボロに泣かされてしまいました。

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と言うより、
135分中100分は泣いていました。笑

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今作、吹替版にも強く力を入れているようですが、どの楽曲もアリエル役ハリー・ベイリーの“息遣い”や“強弱”に“アクセント”、そして表情はもちろん“発声による演技”が堪らないので、是非とも字幕版をオススメしたい。30年以上私たちが聴き続けた『パート・オブ・ユア・ワールド』と今回の『パート・オブ・ユア・ワールド』はほぼ同じ曲なのに、全く違う曲に聴こえるんですよね……。いやあ、天性の才能だなあ。

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可能な限りネタバレを避けたいのでストーリーには触れたくないんですが、「2人が恋に落ちるシーン」が堪らなく素敵!

そして予告編やポスターではほとんどフィーチャーされなかったんですが、エリックの愛犬マックスももちろん本物の犬(ゲイリーくん)が演じています!モフモフ好きも映画館へGOだ!!!

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いやあ、恐れ入ったよ。完璧、これはもう完璧だよ。

正直「多様性や差別について考えるならこの描写にはこういう救いがあったほうがいいんじゃないか」など、思うところがないわけでもないが、一本の映画としてはファーストカットからラストカットまで完璧。

この10年のディズニー映画で、ベスト。
ベストオブベストです。

是非劇場でご鑑賞を。
ちなみにIMAXでは上映時間の半分ほどのシーンが1.90:1画角に拡張されるんですが、その拡張すら美しくて見惚れる。アイディアの賜物です。愛が詰まった映画。私たちも本作に込められた愛を、お裾分けしてもらっちゃいましょう。


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2023/12/29 追記

結局その後映画館でリピートすることもなく、ディズニープラスで見返すこともないまま年末を迎えてしまった。劇場で得た興奮が尾を引くタイプの映画ではななったなあ。
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