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ブラック・スワンのYYamadaのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
4.0
【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
 ◎: 観客の緊張感を煽る
 ○: 超常現象なし

◆作品名:
ブラック・スワン (2010)
◆サスペンスの要素:
・激しい配役争いによる精神崩壊

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・ニューヨークのバレエ団に所属するニナは、元バレリーナの母とともに、その人生のすべてをダンスに注ぎ込むように生きていた。
・そんなニナに「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが巡ってくるが、新人ダンサーのリリーが現れ、ニナのライバルとなる。役を争いながらも友情を育む2人だったが、やがてニナは自らの心の闇にのみ込まれていく…。

〈見処〉
①純白の野心は、漆黒の狂気に…。
 N.ポートマン、アカデミー受賞作!
・『ブラック・スワン』は、2010年に製作されたサイコ・サスペンス。日本ではR15+指定として公開。
・日本でも有名なバレエ戯曲『白鳥の湖』の主演に抜擢され、「潔白の白鳥」「官能的な黒鳥」の2役を演じることになったバレリーナが、次第に徐々に精神が崩壊していく様を描いた本作は、批評面、興行面共に成功を収め、第83回アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネート。
・1年間に亘る1日8時間×週6日の過酷なバレエの特訓にて約10kgの減量の身体作りを行った主演のナタリー・ポートマンは、アカデミー主演女優賞を始めとする多くの賞を受賞。しかし、ポートマンのダンス・シーンは後にボディダブル絡みの論争を巻き起こすこととなった(のちに払拭)。

②姉妹作品
・本作の監督、ダーレン・アロノフスキーの代表作の一つ、『レスラー』(2008)と本作は、もともと一つであった企画を、一本の映画にするにはあまりに大きいため2作に分割したことから、アロノフスキーは2作を姉妹作品と呼んでいる。
・アロノフスキーは「レスリングは最低の芸術、バレエを最高の芸術と呼ばれるが、これらの世界両方のパフォーマーがいかに似通っており、いるかである。どちらも、パフォーマー自身の身体を信じられないほど使って何かを表現している」と語っている。ナタリー・ポートマンとミッキー・ロークの配役が同じルーツにあるようだ。

③結び…本作の見処は?
◎: ナタリー・ポートマンの迫真の演技もさることながら、16mmフィルムにて、粗粒子を用いた撮影に効果的に特殊効果を散りばめた撮影、編集の技法も他の追随を許さない完成度。アカデミー作品賞は『英国王のスピーチ』よりも本作が相応しかったのでは!?(他に『トイ・ストーリー3』やアロノフスキーが製作を務めた『ファイター』など、高レベルの競合作品が多かった)。
◎: ヴァンサン・カッセル扮する振付師による数々のハラスメントには1ミリも共感を覚えないが、ナタリー・ポートマン扮するバレリーナに対する欠点の指摘に説得力があるのは、『セッション』(2014)と類似性を感じる。
~「完璧とはただコントロールすることではなく、身を任せるということでもあるのだ。観客を驚かせるように、自分自身を驚かせるんだ。超越は限られた者にしか持ちえない」
○: 押し潰されそうな重圧は、下手なサスペンス映画より断然怖い。
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