Millet

ブラック・スワンのMilletのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
3.7
ナタリーポートマンガリガリに減量されてバレリーナらしい体型になってたけれど、やっぱり素人感。
ダンスシーンは違和感を感じるほど胸から上のアップばかり。

それからこれは日本語吹き替えを選んでしまった私に非があるけれど、どうしても苦手な坂本真綾さんが吹替声優をしていてあんまりこう、イメージらしくない演技だなーと、最後までしっくりこなかった。

作品のやりたかったこと自体はかなりやれていて、映像や病んでいく描写など良かった。
子離れ出来ない親からの圧力、特に女の親子は娘のことは自分の分身人形のように過度な期待をして、過干渉になる。
もういい大人なのにローラアシュレイのアイボリーフレームのベッドでぬいぐるみだらけの部屋に親の監視付きで寝かされる。
ぬいぐるみたちもチュチュやバレエシューズをはかされて、客観的に主人公ニナを表現している。
親から子へ、子からぬいぐるみへ。
携帯の着信音も白鳥の湖のメインテーマ。神経質で、弱くて、脅迫めいた完璧への固執。

役にのめり込むことで親を裏切ろうとするニナ。28で子供(ニナ)ができてキャリアを捨てるハメになった、なんて言い訳をして自分の夢をニナに押し付けた。
本当は単純に、母親のバレエ才能の問題だったのに。あなたを生んだことではなくて妊娠したことが間違いだったと言われても、子供からすれば「はいはい私のせいですね、私なんか生なきゃよかったのにね」である。

そして我が家も全く同じだ。
ローラアシュレイのアイボリーのベッドで、母親からの過干渉やヒステリーをうけ「生みたかったわけじゃない、父親が欲しがったから生んだだけ」なんて言う。
そしてこの映画を私より先に映画館で見てきていた母親は、帰ってくるなり私に「お前が見るとちょっと。鳥肌になったり皮膚から羽根が出てきたり精神に異常をきたすんじゃないか、鬱に引きずられるんじゃないか」
と、見て欲しくなさそうに言ってきた。
しばらくして見てみたけれど、全然そんな引っ張られるように落ち込む作品ではなかった。

私たちは親を裏切らなくてはいけない。
親の思い通りの人形としての自分を捨てて、自分の人生を生きなければいけない。
ニナにとってはバレエで主役を務めて、親の手を借りずに完璧にやってみせることだった。

白鳥の湖は原曲も大好きで、バレエで白鳥の湖の公演があれば見に行く、DVDでもクラシックバレエの作品は何度も見てるので、バレエ関連のシーンはトゥシューズの下準備が一番丁寧にえがかれているなぁくらいだった。

こういう役に飲み込まれてしまうバレリーナの話は聞いたことがないけれど、もしいたとしたらプリマドンナには選ばれないような気もする。確かにプレッシャーはあって、親も過干渉で、白鳥の湖は白鳥と黒鳥の踊りわけがあるぶんすごく難しい役であることも理解できるが、それでもニナはちょっと病み過ぎである。
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