LUMINA

ブラック・スワンのLUMINAのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
5.0
噂はかねがね聞いていたものの、手を出すことを躊躇していた作品。なぜなら、当時の私にはキツすぎる内容だったろうから。
成長した今の私だからこそ、今回の鑑賞で、この映画の醍醐味を味わったと信じてやみません。

まず、印象的な描写としては、母と娘の支配による共依存関係。母は威圧的に娘を支配し、娘から自立する気力を奪う。そして、気力を失った娘は「(支配で)愛されている」ことにある種の居心地の良さを覚え、自由へと羽ばたくことに大変な困難を要している。

そして、バレエ団内では、女性が多くを占める環境特有の陰湿な空気が常に漂っている。女性だらけの環境で発生するこの化学反応にも似た現象をなんと呼ぶべきであろうか。筆者も女子校出身でいじめを受けた経験があり、この辺りの描写は見ていて心がヒリヒリした。

そして、振付師による支配。彼は精神的にニナをコントロールし、性的虐待も行なった。過去にもプリマを「我が姫君」と称し、肉体的にも精神的にも強固に彼に依存させ、ショーが成功すれば使い捨て、のような怪物男である。

以上のような、「母からの支配」「女性同士の嫉妬」「振付師による支配」この3点によって、もともと不安定なニナの精神状態が悪化していき、統合失調症様の症状を呈していったのではないかと考えられる。

さて、ここまで述べてこなかったリリーの存在についてだが、彼女について私なりの考察を述べる。
おそらく、彼女はニナを自由へと解き放つための、内生的な分身である。
リリーとの出会いによって、ニナは初めて母親に反抗できた。ニナを母から、そして自身の保守性から解放し、まさに「白鳥から黒鳥へ」変身を遂げたのである。

舞台の最後で、彼女は「白鳥の湖」のストーリーと同様に、全ての苦痛から解放され、自由を手に入れた。
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