ダーレン・アロノフスキー監督によって映像化された精神的崩壊を予感する不穏な空気に、ナタリー・ポートマンの規格外な演技が乗っかるとハンパない化学反応が起きるのですね。怯えた子猫が追い詰められて「シャー!!」って豹変する感じのような変身っぷりに息を飲んでしまいます。
ナタリー・ポートマンご自身も、本作を境にハリウッドを代表する女優へと変身を遂げたのではないでしょうか?
ニューヨークにある名門バレエ団のバックステージものだと思って観ていたら……ホラーでした。
クラシック・バレエを代表する演目の一つ『白鳥の湖』。そのプリマ(主役)は、白鳥の方の純真無垢さと黒鳥の方の妖艶さという2つの対照的な存在を演じ分けなければいけないのだそう。
一流のバレリーナを目指して、バレエに没頭する日々を送るニナ(ナタリー・ポートマン)は、演出家(ヴァンサン・カッセル)が求める高いレベルの演技になかなか応えることができません。狡猾で官能的な黒鳥を演じるのに足りないものがあるというのです。
ステージママによる過剰な期待、周囲の羨望と嫉妬、自分の力量への不安の中でニナは自分を解き放とうともがき、プレッシャーで徐々に狂気に侵されていきます。
現実と幻想の境界線が曖昧になっていくニナの精神破壊と、引き出された邪悪な表情にゾッとする。そんな作品でした。
きっと、このジャケ写の女性と街角で出くわしたら「ぎゃーーーー!!」ってなるんだろうな。