【パーフェクトブラック、誕生】
日本的な猥雑さを含みに含んだ『パーフェクトブルー』から、そのアングラ感を拭い取り、代わりに「ステージ」というゴールを明快に設定した、いわばハリウッドならではのリメイクと言えそう。
この「ステージ」というゴールを設定したことによって、バレエに限らず、演劇や音楽といったステージをフィールドとする芸に関わる者すべてに、共感の種を播くことに成功している。
ナタリーポートマンの驚異的な演技はもちろん、考え抜かれたカメラワークも観ていて楽しい。
舞台裏の場面では、まるでドキュメンタリーのように地続きなカメラワークによって説得力と臨場感を与えてくる。
その一方で、時折繰り出される極端な主人公視点によって、彼女が抱える精神領域にわれわれを引きずりこもうとする。
なるほどこれは、ステージに立ったことがある人とそうでない人では、物語の刺さり方が圧倒的に異なりそうだ。
ただ残念ながら、私は「そうでない人」の側なのだけども…。