単純なエログロナンセンスとは一線を画する酩酊感じみた不快さがある。困ったことにそれがクセになっちゃうのがこの映画の魅力。ケミブラのせいでクラブのシーンはこっちまでラリラリしそうになる。
バレエは虚構と現実の狭間でもがく人間を描くための題材にすぎないとはいえ、ある意味アスリートとアーティストの両方の苦労を背負うバレリーナの重圧をこういう形で表現することには賛否両論あったろうな。
周囲の人間も繊細な主人公を支えるどころか彼女以上に難儀な連中ばかりなのが最高。(はたから見てるぶんには)
いい感じに怪しいコーチもなかなかだが、ベテランバレリーナ(ウィノナ)やニナの母親など女性陣が怖いのなんの。
パーフェクトブルーでも思ったけど、男性から見ると女って恐ろしげな情念のいきものに見えるのかな。完璧を求めるあまり心身を拗らせやすいってだけか。
何にせよ悪女のほうが題材として魅力的ってのはある。撮影のお陰もありナタリーの黒鳥は堂に入ったものに見えた。とはいえいちばん好きなのはラストの白鳥としての壮絶な表情なんだけども。