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ティグ: それでも立ち続けるのHALのレビュー・感想・評価

4.7
多分、初めて見るタイプの人。いや、いるんだけど、野心がないので、なかなか芸能界には出てこない人。私の周りにはいないし、いたら憧れすぎておかしくなるから、いないんだろうな。(離れてったな…笑)

アマゾンプライム「ワンミシシッピ」を見ていたので、役者としてのティグ・ノタロという人は知っていた。

その後、ある番組で素のティグを見て、一瞬で恋に落ちた。トーク番組からスタンドアップまで、YouTubeにある彼女の動画を貪った。ゆったりとした口調、絶妙な間の取り方で、なんの変鉄もない話ですら爆笑を呼ぶ。awkwardness(気不味い空気)を楽しみ、転がし、笑いに変える。見たことがないタイプのコメディアン。たまに話す内容が吹っ飛んでしまっても、それもスタンドアップの一部かと思うほどに、巧みな喋りで観客を笑わせる。相当な自信がないと、できない芸当。

トーク番組にゲストとして呼ばれれば、素っ気なさそうに見せて、唐突に司会者にflirt(愛情表現?)してみたりする。こんなに魅力的な人がいただろうか。彼女のことで頭が一杯になった。

そうしてたどり着いたこのドキュメンタリー。

今生きているのが不思議なくらいの困難を乗り越えてつかんだ、成功。だが普通のサクセスストーリーと違うのは、ティグは成功しても、していなくても、「ずっと充実していた」ということ。自分の実力が素晴らしいものだと信じていて、ある程度食べていけていて、有名になろうと躍起になっていたわけではなかった。

私がこのドキュメンタリーを見ていて涙が止まらなかったのは、ティグという人の最大の武器が、私がどうやっても手に入れられないものだからだった。

それは、自分を信じること。
彼女は一度もこの言葉を使わなかった。自分に言い聞かせる必要がないからだ。自分を信じて前に進むことが、当たり前のことだから。悩まないわけではない。でも、前しか向かない。

ティグのユーモアのベースは、お母さんから。こんな人に育ててもらえたら…。ポテト青くしたい…。ティグもまた、子供たちを最高に幸せにするのでしょう。

重なる難病も、最愛の母の突然の死も乗り越えて、40を過ぎて、まだまだこんな素敵な恋ができることも、子供が持てることも(このドキュメンタリーのあと、双子ちゃんができました)、全てがエンパワメント。

その類い稀な人柄にも才能にも、到底及ばないけれど、それでも。
「ティグ」という生き方がある。
それを教えてくれて、ありがとう、ティグ、大好き(まだ泣いてる
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