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シリア・モナムールのditaのレビュー・感想・評価

シリア・モナムール(2014年製作の映画)
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@ 第七藝術劇場 32

わたしが雨音に包まれて眠る夜に、鳴り止まない銃声に怯えて眠れぬ夜を過ごす人がいる。わたしがカーテンを開け昨日と同じ風景を見る朝、昨日そこにあったものが破壊され悲しみとともに朝を迎える人がいる。

5年越しにようやく「わたしは見た」。

今作の後に作られた様々なドキュメンタリーでも示されているように、今もなお政治によって人が人の命を奪い続け、罪のない子どもたちや動物が傷ついている。自分を含め、人間という生き物がほんとうに嫌になる。

美しいことばでは人の命は救えない。綺麗事では争いは終わらない。そんなことはわかっている。ただ、文字どおり命懸けで遺体を引き寄せ、そこに生きた人の人生と尊厳を守ろうとするその姿は、わたしに人間でいることを諦めさせてくれなかった。

99%の絶望と1%の希望を「見た」わたしは、この映画を心に刻み続ける。政治を知り、政治家を見る目を養う。簡単に「死んでほしい」と言う人にそれは言ってはいけないことばだと伝え続ける。人間でいることの責任を果たすためにわたしができることなんて知れているけれど、すべての夜が愛に包まれ、すべての朝がよろこびに満ちるその日まで、1%の希望を絶やさないためにできることはわたしにだってあるはずだ。
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