スピリッツの連載を読んでいた一人としては公開当時「何で今さら映画化？」と思ったが、いやいや、想像以上の出来だった。3Dじゃない板アニメなのに、何なんだ、このリアルさは？
混沌の街・宝町で破壊と暴力を生業とする少年・クロとシロ。彼らから街を乗っ取ろうと画策するヤクザ連中との壮絶なバトル…彼らが流す血は、深作やタランティーノ作品に出て来る血糊並みにウェットな人間臭がしたし、この肺腑を抉るようなリアル感はどこから来てるかというと、やっぱ圧倒的な「声の力」なんだよな。
特に蒼井優の、シロが憑依してるとしか思えない絶叫は圧巻だったし、舞踏家・田中泯演ずるヤクザの声がシヴくてシヴィれた。敢えてアニメ声優を排除したキャスティングは大正解。画の表情と声が絶妙にシンクロしているのは凄い。
ここに描かれている架空の街・宝町は、今の東京であり、日本であり、世界であり、我々現代人の心の奥底でもある。クロシロに脳天カチ割られて、自分のアタマん中をムリヤリ覗かされた気がした。日本語ペラペラ、『アニマトリックス』も手掛けたマイケル・アリアス監督は、コレをアニメ化したいが故に日本に住み、日本人の嫁さんまで貰った。オタクの鑑である。
