「美しい星」
この世界は美しい。
紛れもなく美しい。
だけど僕たちは、それに気付くことができなくなっていく、そんな気がする。
あるいは、この世界を見つめ、この世界に触れ、この世界を感じ、この世界を"美しい"と思える我々が、真に美しいのではないか、そして、それを放棄し始めているのではないか、そんな気もする。
この世界にとって、僕たちはどんな存在なんだろう?
約75億も存在する人間という個体。
自分は、約1/7,500,000,000という数字を考えると、どうしようもなく途方に暮れてしまう。
歩けないほどの人混みに溢れる神宮外苑の花火大会。
例えば100万人の動員だとして、それでも世界から見れば1/7500の集いで、僕はその中の一握りの中のほんの小さな一粒でしかない。
僕たちは本当の本当に、取るに足らない存在なのかもしれない。
僕は人類の一握りの中の、カスの中のカスのカスほどにちっぽけな存在なのだ。
人はいつか死ぬ。
海
鳥
山
川
月
青
木
雲
人
何もかも。
その何かを見て、何かに触れ、美しいと思うことのできる、人間だけが得ることのできた特権をみすみす失いかけながら、いつか死ぬ。
その時に、僕は何を感じるんだろうか?
それはわからない。
いつか、別れが来るであろう家族や友達、愛する人。
あなたは、この星とお別れする時、美しかったと思って去るのですか?
それはわからない。
だけど、これだけは覚えていてほしい。
傷付き、傷付け、迷い戸惑い、間違いながらも、だましだまし生き続けたこの人生。
そして、これからも、命続く限り歩き続けるであろうこの人生。
きっと、出会った全ての人のおかげで、僕はこの世界の、愚かさや醜さやくだらなさやどうしようもなさと同じ分だけ、美しい側面にも気づく事ができたんだよってこと。
一人一人は取るに足らない存在だけど、その取るに足らない存在同士の世界は、その取るに足らない存在によって、少しずつ形成されていくんだね。
多分、僕はこの世界のいたるところにいる。
あなたもきっと、この世界のいたるところにいる。
誰の存在だって世界には取るに足らないくても、誰かの世界はそれがあって造られて、本当の存在は居なくなってもここにいる
会えなくなってしまったあなたへ
なんだかんだ言ってはいるけれど、
この星は美しい星です。
一瞬でもそう思えるのはきっと、美しいと思える僕に、あなたがしてくれたからだよ。