takanoひねもすのたり

メットガラ ドレスをまとった美術館のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

3.4
数年前リアーナの真っ黄色のドレスが話題になってた時のメットガラ、開催までの密着ドキュメンタリー。
この時のテーマが中国とファッションだったため、裏側で大変にデリケートなやり取りがあった模様だったけれど、調整がクソ大変だったであろう部分はぼかされ気味、でもさらりと毒を吐いてる部分も入ってるw

演出監督にウォン・カーウァイ監督、終始無表情で圧が強い。美術館側の開催意図を読み取りつつ、西欧側の視点も中国側の言い分も、自身が腑に落ちない点はきっちり指摘するところ、彼のメンタリティが多少伺える気がする。

美術館の服飾部のキュレーターとVOGUEの女帝アナ・ウィンターのタッグで開催する今やメットガラの服飾部の資金集めに欠かせない催しとなった一大パーティ。セレブがハイファッションを纏うことで大衆文化とのパイプ役にもなり、ブランドはセレブにハイブランドのドレスを纏わせることで個の表現とアピールになる。セレブはセレブでこの時の着こなしをこき下ろれたり称賛されたりする、招待する側も人選を厳選するし、かつ出席する側もとかく注目度が高いので、表方と裏方と両方が想像以上に大変。

美術評論の界隈でファッションにおける美術的価値が改まったのが近年(アレキサンダー・マックイーン自殺以降)というの意外というか、そうか服飾というのは彫刻や絵画と比べると美術品としては軽んじられていたのかという事実、かなり保守的な世界なのだなと……そのわりに現代アートの価値観の分けのわからなさは何なんだとは思うが。

キュレーターの方、初めアメリカ人らしからぬ雰囲気だなあ(ファッション界の人とはいえ。アナとはまた違う)と思っていたら、英国人だと途中で分かり、何となく納得。あの佇まいはまあ確かに。

アナ・ウィンター、キャラクター像を裏切りませんなあ……そのまんまだった。

メットガラの裏側を覗き見した感じは楽しい。
庶民向けでない美術館の側面、ビジネス的でシステマチックだし、冷徹な結果主義なんだろうなと。