SatoEmiko

ある戦慄のSatoEmikoのレビュー・感想・評価

ある戦慄(1967年製作の映画)
4.2
各々長い一日を終え、それぞれのストーリーを抱えた乗客たちを乗せた夜の電車。そこに乗り込んできたのは、良心のかけらも持ち合わせていないようなチンピラ二人組。彼らが一人の乗客に絡んだ事から、狭い車両の中で始まるうんざりするような悪夢。

チンピラたちもそれはそれは悪質なのだけれど、この映画で何よりも胸くそを悪くするのは、真っ当で、善良な市民の仮面をかぶった、チンピラの被害者であり傍観者である乗客たち。
チンピラに煽られれば煽られるほどに剥がれ落ちる善人の仮面の奥から覗く、傍観者たちの心の闇には、自分にも思い当たる節がある分、彼らと自分の不甲斐なさに胸やけすらしてくるほど。

まるで、自分もこの車両に乗り合わせていたかのような嫌な疲労感を残して終わりました。こんなに疲れる映画はあまり出会った事がないかも。

ただ、過去に起きた似たような珍事件("乳女事件"。電車内で突然見ず知らずの人物に「乳女(ちちおんな)!!」と大絶叫で追い回され、助けどころか目も合わせてくれない他の乗客と、止まない乳女コールに耐えられず途中下車。北の大地から都会に出てきたばかりの田舎娘だった私への都会の洗礼)を思い出して、たまに可笑しくなっちゃったのは恐らく私だけ。
SatoEmiko

SatoEmiko