ある朝目覚めると、越えることのできないガラスの壁の中に閉じ込められていたという女性を描いた話。原作はマルレーン・ハウスホーファーの同名小説。
自然の中の一つの存在としての人間、無限性を持って流れる時間や抜け出すことができない制約の中で彼女が逆に人間らしさとは何かを考えていく様が面白い。
「人間は動物にはなれない」
その所為は人間には理性があるからなのだろう。自然と同化する中で彼女が理性と格闘する姿はヒューマニズムそのもの。
また、自然と同化して共生を図る彼女の生活を簡単に壊してしまう人間の登場は自然の秩序を壊すのはやはり人間だという皮肉に見えた。
この映画は会話がなく、彼女の日記として語られる詩的な響きを持ったナレーションで物語が進む(ナレーションは原文そのままだそう)。
文学の世界では視覚的補足も多分に混ぜなくてはいけない「会話」がない分映画に適しているし、文学的強みも生きた映画だったように思う。