MikiMickle

ファウンドのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ファウンド(2012年製作の映画)
3.8
マーティは小学生の男の子。学校ではいじめられ、楽しみは唯一の友達とホラー漫画を描いては交換し、80年代のホラー映画を見ること。

そしてもうひとつの毎日の楽しみは、家族の秘密を覗き見ること。
車庫に隠してある父のエロ本。ベッド下の母の元彼からのラブレター。
そして、お兄ちゃんのクローゼットのバッグには、いつも生首が入っている。だいたいが黒人の女性…時々変わる。
そして、ある時、その首が彼を苛めた同級生だった…

この映画はただのホラー映画ではなく、むしろ兄弟愛を描いた青春ものであり、ひとりの少年の葛藤や悲しみや苦しさや苛立ちや歪みを描く成長ものだったと言えます。
友達からはバカにされ、唯一の友達にもけなされ…
親を含めた大人からは理解もされず、勝手な価値観と理不尽な建前を押し付けられ…(父なんかは思いっきり差別主義者で…)
そんな中、だんだんと歪みを攻撃性と自己主張と狂気を持ち始める主人公マーティーの変化には目をみはるものがあります。

そして、それを増長させるのが年の離れたホラー好きの兄の存在。
親とは常に対立しあい、なおかつ殺人鬼なのかもという疑惑の中、マーティーに対しては優しく唯一の理解者である兄。マーティーにとっては救いの神でもある兄。
マーティーにとっては、兄が殺人鬼であろうともなかろうとも、兄の生首をみているのがばれるかどうかが一番の問題なのです。そして、兄のようになりたいと願う気持ちが、マーティーを強くしていくのです。

が、ここで思うのは、その兄もマーティーと同じように苛められホラーの世界へと逃げ込んだのではないか、嫌悪する父と同じようになりたくないと言いつつ、結果的に同じような考え方を持ってしまった事への葛藤があるのではないか…という事。
直接的な表現はないが、そういったことを考えてしまう…

そして、人のサイコパス性というものは、果たして先天性なのか後天的なものであるのか…はたまた遺伝なのか…
様々な事を感じました。

また、「ホラー映画」についての映画でもあります。

ホラー映画は人を残忍にさせるのであろうか…
それを考えさせられもしました。
テレビやなんかでそういった事が言われると、ホラー好きとしては実に実に腹立たしいのですが、この映画に対しては全くもって嫌な気がしませんでした。
何故なら、ホラー愛が溢れているから‼
兄の部屋にはたくさんのコアなホラーのポスターとビデオ‼ふたりの会話が『ヘルレイザー貸して。』『ミディアンもいいぞ』と‼‼ あぁ、なんて素敵な会話‼ 私もミディアンをオススメしてくれる兄が欲しかった!
そしてマーティーが借りるビデオは『deep dwellers』ディープ ドゥエラーズ、『death rattlers』デス ラトラーズ、そしてケースのみで中身の無かった『headless』ヘッドレス…色々調べてみたけど、見つからず。監督のフェイクものかな。

しかし、ヘッドレスは劇中で映像が流れ、B級ホラーではあるけれどもその残客性が素晴らしくおもしろいのであります‼観たい‼これ、観たい‼‼ 友人とこっそり訪れるホラー見世物小屋みたいな廃墟的な場所も、青春とホラーが合わさったドキドキ感があり、心が踊ります♪

あっっ‼つい、テンションが上がってしまった(笑)
話を戻すと、このヘッドレスという映画もかなりキーポイントになってきます。兄の隠れた感情とマーティーの複雑な感情が、言葉に出さぬともわかるようなものでした…
グロ度に関しては、そのヘッドレス以外は全然で、最後の見せて欲しいところはなぜか見せてくれないのですが、その、あえて残忍な部分は見せないけれども、このシーンでどういう事かわかるでしょ?という監督の意思でもあったであろうある箇所を“見せる”シーンがモザイクかかってて、あそこできっと彼は○○してたんだろうと想像はつくけど、そこで彼がどういう人物だったのかハッキリする部分であったと思うので、非常に勿体ない…
いやです、日本の勝手なモザイク

ラスト。なかなか印象に残るサイコなシーン。そうくるんだ…と…なんか、歪んだものって、怖くも時に美しくもあるな、やっぱり…
「モンスターは誰?」この言葉がやけに胸をさします…… 誰でしょう……兄か、父親か、マーティーか、社会か……
人がどうやって歪んでいくのか…どこで誰が何が、その越えてはいけない境界線を飛び越えさせるのか…それを完全には明確にはしないけれども、感じて考えさせてくれるような映画でした。
MikiMickle

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