KSat

ファイナル・カットのKSatのレビュー・感想・評価

ファイナル・カット(2012年製作の映画)
4.0
映画を知らない世界の住民にぜひ見せてあげたい、珠玉の恋愛映画。

ハンガリーのキチガイ監督パールフィ・ジョルジが、一組の男女が出会い、結ばれ、争い、別れ、絶望の末に再会するまでを描いたシンプルな物語だ。

しかし、この映画のために撮影された素材は一切ない。往年の映画、「アバター」から「ドラキュラ」、チャップリンから「カサブランカ」、「氷の微笑」から「オペラ座の怪人」まで、古今東西あらゆる映画のカットを繋ぎ、膨大な著作権料を支払って生み出されたのだ。

「これぞ映画愛」といわんばかりのそれは、「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストシーンを一時間半に伸ばしたようでもあり、横浜トリエンナーレで話題をさらった「時計」でお馴染みクリスチャン・マークレーの作品に物語を加えたようでもあり、ゴダールの最近の映画を思いっきり俗っぽくしたようでもある(個人的な印象としては、この3つの中だと2番目が最も近いかな)。

ただストーリーを語るだけでなく、全く違う映画の無関係なはずのカット同士をアクション繋ぎしてしまう妙技には、ただただ唸るしかない。

だが、監督の嗜好は隠しきれていないし(デヴィッド・リンチマニアなのは明らか)、往年の誰も知らないハンガリー映画がやたらあるのはいいとしても日本映画が少なすぎる(羅生門、千と千尋の神隠し、イノセンス、カウボーイビバップ、パプリカ、菊次郎の夏くらい)のはちょっと。溝口とか相米とか黒沢清とか結構使えるやろ!
KSat

KSat