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透明人間のYYamadaのレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
3.8
【ホラー映画のススメ】
◆作品名:
透明人間 (2020)
◆映倫区分 / 日本 : PG-12
◆ホラーの要素
 視覚不詳な何かが恐怖を煽る
◆恐怖の種類とレベル
 精神的恐怖 ★★★★☆
 肉体的恐怖 ★★☆☆☆
 知識的恐怖 ★★☆☆☆

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・富豪の天才科学者エイドリアンに束縛される生活を送るセシリアは、ある夜、計画的に脱出を図る。悲しみに暮れるエイドリアンは手首を切って自殺し、莫大な財産の一部を彼女に残す。
・しかし、セシリアは彼の死を疑っていた。やがて彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、命まで脅かされるように。見えない何かに襲われていることを証明しようとするセシリアだったが…。

〈見処〉
①見えるのは、殺意だけ——
 低予算、大ヒット・ホラー
・『透明人間』(原題: The Invisible Man)は、2020年に公開された、『ソウ』シリーズの脚本家リー・ワネルが監督・脚本を手がけ、透明人間の恐怖をサスペンスフルに描いたサイコスリラー。
・本作は、H・G・ウェルズが1897年に発表した小説『透明人間』を原作としており、1933年に公開された映画『透明人間』を現代風にリブートした作品。
・主演は、テレビドラマ『ハンドメイズ・テイル侍女の物語』のエリザベス・モス。

②紆余曲折の製作
・本作の製作会社ユニバーサル・スタジオは、ディズニーによる『アベンジャーズ』シリーズの成功を横目に、1920年~50年代にかけて、ユニバーサルのドル箱コンテンツであったホラーキャラクターを再終結させ、シリーズ化させる「ダーク・ユニバース」構想を企画。
・その第2作として、ジョニーデップ主演作品として企画化された本作であるが、ダーク・ユニバースの第1作目として公開された、トム・クルーズ主演『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017)が、批評面・興行面の双方で惨敗。結局ユニバーサルは往年の怪物たちをシェアード・ユニバースの形で復活させるのではなく、単発作品として製作していく方向に軌道修正を図ることになる。
・このような経緯にて「ダーク・ユニバース」構想は本作『透明人間』を最後に企画は停止されたが、低予算作品の名手リー・ワネルの手腕により、わずか7百万ドルの製作費の20倍となる143百万ドルの世界興行収入を達成。批評面でも大絶賛された。
・単体作品としての成功を受け、本作続編の製作の可能性は残されており、2019年11月には、ユニバーサルがエリザベス・バンクス監督・主演によるリブート製作の報道があるも、その後の動向は不詳である。

③結び…本作の見処は?
◎: 過去の作品群が「透明人間」となる「加害者視点」であることに対し、本作は「被害者」視点で描かれていることにより、ホラー、サスペンス要素が格段に濃密となっている「構成の勝利」の作品。
◎: ホラー要素では、急な音や映像による「驚かし演出」ではなく、ひたひたと忍び寄る正統派の恐怖を描いている。
◎: サスペンス要素も「黒幕」の正体が最後までわからない構成にて、集中力を切らせない。
○: 薬ではなく、カメラスーツによる透明化は、現代的でリアル。
○: 主演女優がグラマータイプのハリウッド美女でない点もリアル。
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