ダイナ

透明人間のダイナのネタバレレビュー・内容・結末

透明人間(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

SAWでジェームズ・ワンと共同脚本を描いたリー・ワネルが監督のスリラー映画。透明人間の映画と言われるとヴァーホーヴェン版が印象深いですが本作もそこそこ面白かったです。セシリアの肌の荒れ方が状況とリンクする演出が良い。

正直なところ1時間ぐらいは可もなく不可もなく凡庸な印象で、ショットは綺麗だけど「透明人間」といったら見えない敵に翻弄されてあーだこーだなるよなーの範疇で展開される内容でボケーと見てたんですが、スーツの存在が明らかになったところで拍子抜けしたと同時にこれはこれで面白くなりそうだなとも思いました。ビジュアルがコナンの犯人というかヒーロー映画のヴィランみたいで、やってることは恐ろしいけど見てくれ(というか「不可視」故の存在感)からの恐怖感はグンと下がった部分が否めませんが、透明化が肉体に依存するものでなくスーツを着ることで成せる。いわば「透明化」の可能性は全登場人物に付与されたと同義であり展開の広がりを持たせる起爆剤で本作のとても面白い所です。スーツにかけられたペンキってあんな水落ち早いかとか、透明とはいえ争いの中だったら足音とか物音とか嫌でも大きくなるだろうに急にそんな存在感消せる?とか思うもあのスーツの明かされていないサブ機能が万能だったということで…。

脅威の正体の手がかりを掴むもハメられたセシリアはお縄へ自傷へ…のシーンについて。阻止に介入後、透明人間の存在を誇示するかの如くバッタバッタ警備員を薙ぎ倒すトムさん、せっかくの透明化アドバンテージを明らかにしてしまうのかと困惑。エミリーは手にかけたのにここでの目撃者達は抹殺せず気絶で止めるこの中途半端な殺生感。最初に部屋駆けつけた警備員だけ口封じに亡き者にして、シドニー脅しをちらつかせるだけで良かったのではと。ペンで刺されて動揺したんだろそうなんだろ、窮鼠ナメたらダメですよ。ここでの車パクって追跡する件の事故車のタイミングの良さは完全に「ポップコーンムービーですよ!」と高らかに宣言しているかのようで、じゃあもう気楽に楽しむことにするよ。

「自分だけしか認知していなかった脅威が周囲に明らかになり信用が回復する展開」が好きな自分はこの後の家宅捜索展開は「そこ突っ込んでいくのイイネ!」と行った感じなんですが、ここでスーツ見つからないのなんで?と。とんでもねえテクノロジーアイテムやぞ。セキュリティルームの認証通らないから後回しされたのでしょうか。

偽装工作やマインドコントロールに定評のあるエイドリアンの最期は上手を行く印象が無かったのは残念。この点セシリア黒幕説というもがあるらしいのですね。作中の一挙手一投足誰に向けて演技してたのよと考えると苦しいですが、黒幕の可能性を濁すのは想像の楽しさを残しますねといった所です。ジェームズが盗聴していた手前、エイドリアンがあの時透き通る気持ちでちゃんと応えていたらおそらく助かっていたはず。これまでの過程の善悪は置いといて現時点の誠実さを成敗前に問うのはイコライザーのマッコールさん(初期)のようで、セシリアが全て掌握していた腹黒黒幕とはやはり考えづらい。なんにせよペンキとかコーヒー粉部屋にばら撒かれたり襲われたりと散々な目にあう親子は幸せになってほしいですね。
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