むらむら

透明人間のむらむらのレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
5.0
透明人間と化した元恋人のストーカーに追いかけられるホラー。令和でアップグレードされた透明人間映画の新機軸。

透明人間を相手にするので、当然と言えば当然だが、主演セシリア役のエリザベス・モスは

「ここ、誰かいる?」
「逃げなきゃ!」
「出てきなさいっ!」

みたいな一人芝居をほぼ2時間、延々続けることになる。

彼女の、イッセー尾形の一人芝居を観たときのような熱演にやられて、俺的には「ジェーン・ドゥの解剖」の主人公の死体役の女性と、どれくらいギャラが違うのか、比べてみたくなった。

セシリアの熱演というか、独り相撲を目の当たりにし、最初は彼女をサポートしていた周囲の人たちも、次第に冷たくなっていく。

特にセシリアを暖かく家に迎えいれた黒人警官のジェイムズ親子。透明人間の恐怖に囚われたセシリアは、ジェイムズ家の居候だってのに、部屋中の珈琲の粉をぶち撒けるわ、白ペンキをひっくり返すわ、やりたい放題。こんな店子いたら、優しい親子であっても「出てけー!」ってなるのも当然。俺なら「透明人間に追われてるの!」って店子が言い出した瞬間に、大至急、救急車を呼んで入院させてる。そんな、孤立無援状態になってくセシリアの姿が見もの。

次第にセシリアを信じられなくなる登場人物たち。打って変わって、我々観客は、映画での何もない空間に、透明人間の影を感じる始める。いやはや、これは一重に丁寧な演出の賜物。

冒頭の5分間、あえて台詞を排除して行動だけで見せていくやり方だったり、あえて無意味な余白をスクリーン上に作っていたり、あえて誰もいないシーンを映し続けたり……さすが「ソウ」の脚本家。観客の心理状態を、よく分かってる。「パラノーマル・アクティビティ」みたいな、寸止めホラーが好きな人には100%オススメの映画だと思います。

あ、途中、とあるシーンで、蓮コラみたいなのが出てくるので、集合体恐怖症(蜂の巣のような画像に嫌悪感を感じる人)は観ないほうが良いです。

以下、全く映画とは関係ないけど、この感想を書くために、「透明人間」って本当にいるのかしら、とYAHOO知恵袋で検索していたら、気になるQ&Aを発見したので幾つか紹介しておく。

Q.透明人間を見たことある方はいませんか?
Q.透明人間になれるようなアプリはありませんか?
Q.透明人間に出ていってもらうにはどうしたらいいですか?
Q,家族から透明人間のような扱いを受けてます

俺個人としては、最初の3人は病気だと思うし、最後の一人は気の毒だ。

だが、こうやって透明人間を切望する人もいれば、俺みたいに「透明人間」というタイトルの映画を好んで見に行く人もいるこの世の中は、もしかしたらセシリアやエイドリアンみたいに、全員どこか何か狂ってるのかもしれない、なんて思ったりした。

おまけで、もう一つ、どうしても気になったQ&Aを紹介して、この拙い感想を終えたい。

Q:マジックミラー号と透明人間どっちがお得ですか
A:マジックミラー号は現実的、透明人間は非現実的なので、お得なのはマジックミラー号かもしれませんね

ふわっ!?
ど、どういう理屈なのだ……!?
むらむら

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