Anna

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのAnnaのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

毎回楽しみにしていたパラマウント・ピクチャーズのロゴから似たようなシルエットに変わって本編へ~のくだりがなくなって初っ端からしょんぼり。そうだよね、もう情勢変わってるよね…シンデレラ城の背景から敬意を感じるし、ええやんこれでって懐古する思考もインディ登場で吹っ飛ぶ。若いっっ!!アゴのあたりがなんかむくんでるみたいな違和感あるものの、えっ!?過去こんなシーンあったっけ!?ってぐらいどう見たって若きハリソンフォード。今の技術本当に凄い。これなら若き日の冒険とかってハリソンでドラマ出来るやんって未練がましく思ってしまう。じっくり浸る間もなくアクションとんでもアクション合間に笑いそしてアクション。この緩急がああインディだなってにんまり。マリオンの写真に愛。列車のくだり凄すぎて字幕読んで画面みて字幕読んでってうおおおおお動体視力追い付かねええええ。回想シーンから現代に戻った時はもう息も絶え絶え。からのまさかのTシャツ短パンにバット?というアメリカドラマ隣人頑固オヤジスタイル。自分の思ってたシニアインディのライフスタイルの斜め上きて思わず笑ってしまったwwてっきり一軒家だと思ったしなぁ。あ、別居してるからか(涙)

年を取っても昔と変わらず可愛い大学でのインディ。なんでやろこの人のスーツ姿て昔から妙にチャーミング、とか思ってるの私だけかな。時は月面着陸の成功にわく宇宙開発時代かぁ…そういえばインディてアドベンチャー映画でも時代背景描く作品だった。色々浸ってるとこに殺人………一瞬息が止まった。今まで近しい一般人が殺される事がなかったし、インディシリーズはそこは大丈夫って無意識に安心しきってたから衝撃が凄かった。その後のインディの高齢ながらガンガン攻める姿カッコよかったし、体が追い付いてないけど絶対あきらめないところ素敵やったし、大好きな馬上のインディ!!と、ずっと胸が躍った。けれど撃たれた出来事もまたずっと胸に痛みとして残った。

サラーの砂漠が恋しいの言葉、胸にくる。モロッコのカーチェイスではようやく現在インディに不敵な表情戻ってきて嬉しかった。インディって考古学へのあくなき探求心ありつつそれとは別のベクトルで冒険を求めてるよなぁ。ただまたも殺される友人…ううう胸が苦しい。暗号を解けと強いるフォラーを拒むインディ、そこでヘレナの機転……これっこれっこのシーンはーー!!

前作は母子との思いがけない再会だったから、インディもマットも親子としての意識はまだ浅かった。今まで様々な作品の中で父と息子(もしくは疑似的な)の関係性そして息子の成長を、時には主軸に、時にはテーマの片隅で、必ずといっていいほど描いてきたスピルバーグなら、クリスタルスカル後もしマットが出演していたとしたら、息子がインディを越えていく一瞬を作中に描きたいって思ったんじゃないだろうか。今作の監督・脚本マンゴールドがどう思っていたかは分からないけど。

ずっと人の命が奪われていくのを止めるためにアンティキティラを追っていたから、歴史的遺物を前にしてもずっと表情硬かったインディ。それでもギリシア・ローマ時代を目の当たりにした時初めて瞳に光が浮かんで…その表情に胸が熱くなった。けれどここに残ると言った時、それが心すべてで望んだことなら、例えそこで命を落とそうともどう生きるかはそれぞれの選択であるから止められないと思うし、自由に生きて欲しいと願う。でも、残ると言った時の瞳の奥に痛みがみえた。それは息子を亡くしマリオンを失い、友人たちが自分のせいで殺された…絶望ばかりで生きる意味を見出せない世界に戻りたくなかったんじゃないのか。でもさ、愛した人が殺人容疑で指名手配されているのに本人は行方知れず、そんな世界に息子喪失の痛みを抱えたマリオンひとり残していくの?心は共にあったんじゃないの??………レヘナ渾身のストレート。ブラボー!私でもそうした。

色んな宝を守り人を救ってきたインディだけれど、今回は友人の嘆願を聞かずアンティキティラを壊さなかったゆえに大事な人の命を失ってしまった。それでもこの現実で生きていかなければいけない。静かに打ちのめされているインディの姿が苦しくて苦しくて。ヘレナの言葉が、問うてくるマリオンの言葉が重く心に響く。

どんな困難も直感と機知で潜り抜けていく様が痛快でカッコよかった、子供のころから大好きだった魅力的なキャラクター。でも…今そこにいたのは、豊かな人生に喪失と老いが刻まれ痛みを抱えるひとりの男だった。その、今までのシリーズで感じた事のないその姿に切ないほど惹かれた。…ハリソン・フォードってこんな顔するようになったんだなぁ。演技では表現できない、歩んできた長い長い日々を地の果てから眺めるようなそんなまなざし。

捕まってまで聖櫃の中身を知る事を望んだのに最後は生きることを選んだ。秘宝を村に戻し民を救った。聖杯を選ばず父の手をとった。未知への探求よりも心を通わす相手に寄り添った。…数々の冒険の中でいつだってそこに生きる命を選んできたインディが最後の冒険で手にしたもの。それがマリオンとインディの2人の中にあって、そのあたたかさに泣いた。

ふとマリオン登場シーンで思う。レイダース時マリオンにとってインディは憧れで愛した幻、再会シーンがインディの影だったの印象的だったから、今度は逆ってのもありだったんじゃないかと。インディがヘレナと話した後、彼の背後の壁に写るマリオンの影…が徐々に実態となって表れての二人の会話。うーんくどいかな??ラストのハットのシーンもあれはあれで昔の映画っぽくて可愛くて、やっとコミカルなインディが帰ってきてホッとするんだけど、干してるんじゃなくて窓辺に置いてあって、ふわって誰かとるんだけどインディかインディを継ぐ誰かなのか…ハットがカメラ側に引き寄せられて…ああバトンは観客の心に渡ったのか。みたいな映し方やったらどう感じたかな??とかとか妄想。

物語や人物解釈の正解は監督や脚本家や演じた俳優それぞれの中にあるんだろうけど、答えは観客それぞれの数だけあっていいと思う。それがたとえ自分の完全な思い違いだったとしてもそれはそれで面白い。自分の感じたことは自分だけのもの。いつかは舞台裏や設定を知りたいけれど、まだしばらくは心のなかで色々想像したり考察したりして楽しみたい。これまでの4作品があったからこその感動で星5つ。

友人におもしろかった?と聞かれてうーんと悩む。おもしろい…けど苦しい想いもあった。そう、言うならば

「どうしようもなく心がふるえた」

やわ。
Anna

Anna