よーだ育休中

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

4.0
1944年。キリストの脇腹を貫いた《ロンギヌスの槍》を奪還するため、若きDr. Henry "Indiana" Jones Jr.(Harrison Ford)はナチス・ドイツに潜入する。聖槍は偽物だと判明したが、奪還の過程で《欠けたアンティキティラ》を発見する。
1969年。アポロ11号の月面着陸に沸く合衆国で、Dr. Jonesは考古学教授としての人生に幕を下ろした。定年退職直後、亡き友人の娘が彼の元を訪れ《アンティキティラ》探索の話を持ち出したことで、新たな冒険の歯車が動き始める。


◆ 黄金期の冒険を振り返る

前作『クリスタル・スカルの王国』から15年の歳月を経て公開されたシリーズ最新作にして最終作。前作までシリーズ作品の監督を務めてきた映画界の巨匠Steven Spielbergは製作に回り、新たにJames Mangold監督がメガホンを取りました。絵画的な画づくりが上手いと感じましたし、なにより過去作へのオマージュが、そのまま過去作(ひいてはその製作スタッフ)に対するリスペクトと感じられました。

今作ではヴィランであるナチスの科学者役にMads Mikkelsen。Indianaの友人であるギリシャの漁師役にAntonio Banderasが起用される豪華さ。伝説のアドベンチャー作品のシリーズ最終章を飾るに相応しいキャストです。

パラマウント・ピクチャーズからディズニーへと権利が移行した事で、冒頭でお馴染みの《パラマウントのロゴ》が本編映像に映り変わる導入部分が観られなかったのは少し残念でしたが、シリーズ三作目にあたる『最後の聖戦』同様《アバンが過去の冒険》である事は非常にワクワクしました。

前作『クリスタル・スカルの王国』の冒頭と同様に、拉致された教授の顔から麻袋が取られると同時に素顔が露になる演出。演出は同じなのですが、前作では19年振りのカムバックを《懐かしむ》効果が強く、今作では最新の映像技術に《驚く》効果が強かったと感じます。AI技術と過去の映像資料を用いて現代に蘇った若き日のIndianaには心が震えました。過去作とは異なり、少し焦らされた後に鳴り始める《レイターズ・マーチ》には、やはり気持ちが高揚します。

物語の導入+過去作品へのオマージュに加えて、現代に繋がる美術品への含みを持たせた演出も良かったです。ナチスの車両には《ラムセス二世》が載せられていて、「これは本物」である旨の発言がありました。アバンのラストで掲げられたユニオンジャックから、これらの美術品はすべて《大英博物館》へと収蔵された事が窺えます。教授の信念である『歴史的価値のあるものは美術館へ寄贈すべき』が全うされた事がわかります。

《ナチスの敵》として彼等の野望をくじき、美術品を在るべき所に収めてきた教授の、人生の黄金期における華々しい成功体験が提示されたアバンでした。


◆ 人生の夕暮れを迎えて

若き日の冒険から一転。Indianaは、25年の歳月を経て教授職を退く年齢に達していました。ニューヨークの一室に暮らす姿からは、かつての覇気は感じられず、自ら《偏屈者》と揶揄する姿が印象的でした。

肩と脊椎がイカれて、膝には金属が入っている。ブードゥー教の呪いを受けた。過去の冒険を思い返しながら、現在の自身がボロボロであることを訴えます。世間の関心は《考古学》から離れ、自身もまた《古い人間》であると自らをなじっている様でした。

今作におけるマクガフィンは《聖櫃や聖杯》《サンカラストーン》といった宗教的色調の強いものではなく、《クリスタル・スカル》のようなオーパーツでもありませんでした。古代ギリシアの《科学者・アルキメデス》が発明した天体運行を観測する機械に、《時の裂け目》が発生する場所を予知するというフィクションが付与されていました。

《過去の改変》が可能であることが示唆されたガジェットを契機として、《過去を探求》してきたIndianaが、晩年《自身の過去に思いを馳せる》プロットは、シリーズ最終章に相応しいものであったと思います。


◆ そして歩き出す第二の人生

《過去への執着》というよりも《現代からの逃避》のような彼の言動を押しとどめたのは今作におけるヒロインHelena Shaw(Phoebe Walter-Brdge)でした。敵か味方か測りきれないミステリアスな美女は『最後の聖戦』にも登場しましたが、今作では彼女がIndianaのパートナーとして機能します。

ロマンス要因が欠片も無いヒロインは今作が初でした。Indianaの友人の娘であり、ゴッドドーターでもある彼女が考古学の道を進む様は、考古学への興味関心が薄れていく時代にあっても先人たちの道に続く若者を通した《世代交代》であり、Indianaの生きた証のようでもありました。

勿論、彼が歩いてきた道程は「後世に受け継がれること」だけでなく「共に歩いた仲間たちの存在」という形でもしっかりと残っています。旧友Sallah(John Rhys-Davies)との友情は素晴らしかった。

晩年のIndianaに用意されたラストカットには、ついつい涙腺が潤んでしまいます。作品における正ヒロイン(Karen Allen)が登場してなぞられる『レイダース』の逆転名シーンは、あまりにも嬉しすぎるサプライズでした。


ー痛くないところは?



~~~~~~~~~~~~~~°∠

1981年に公開された『レイダース』から始まった大人気シリーズが、42年の歳月を経て遂に終わりを迎えました。本作のラストを劇場で迎える事が出来て、本当に良かった。

お付き合いしてくれたちぃちゃん、ありがとう!何気に劇場公開作品の同時レビューは初めてだから、なんか嬉しい!