スペクター

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのスペクターのレビュー・感想・評価

2.8
本作で扱われているお宝は「アンティティキラ島の機械」のことで、昔ドキュメンタリーで見て知ってたから分かったとき少し興奮した。

天才学者アルキメデスが作ったという超正確な天文計算機で古代ギリシア文明の叡知の結晶。
しかしそれだけでなく実は人類の歴史を変えうるある秘密があった…という展開。
オープニングのCGで若返ったハリソン・フォードは違和感が無さすぎてびっくりした。最初のアクションはインディー・ジョーンズしてるな~と思った。

歴史の遺物を追いかけていたあのインディー・ジョーンズ自身が時代に取り残された遺物になっていて、息子を戦争で亡くし、妻も出ていった。しかも大学でも誰からもまともに相手にされない孤独な老人。そんな彼が過去にすがりつく意味でダイヤルを友人の警告に反して持っているのかなと。

宝の奪い合い、バイクアクション、列車移動、乗馬、鞭を振るう、蛇が嫌い、子供が活躍、現実を超越する瞬間、歴史的瞬間に立ち会うなど、偉大な過去作の要素をなぞらえて、敬意を持って取り組んでいるのは伝わる。

ただ、話が進むにつれ何か違う感じが漂った。過去作の要素をなぞらえることで、ノスタルジーには浸れるけど、そこから新たな刺激は生まれないというか…。

本作のヒロインのヘレナだけど、峰不二子みたいな設定要るかな~?
父親の跡を継ごうとするヤンチャで借金してる考古学者の卵で良くない?ギャングの息子との一悶着は無くても成立する。
モロッコでの冗長なカーチェイスや何が起こっているのか分かりにくい海中でのシークエンスで少しずつテンションが下がっていった。
ハリソン・フォードが何せ老体で無理が出来ないから、代わりにもっと体張れる人が必要だったんじゃないか。
あと敵の数が少なくて、過去作よりショボくなっている。予告編の最大の冒険っていうのは何をもってして言っているの?
これを言ったらなんだけど、1969年のシチリアだから未知の世界に足を踏み入れる感じは無かったな。終盤にアルキメデスの生きていたシラクサ攻防戦(紀元前212年)の時代に飛び込む仕掛けはある(少し長いけど)。

全てを失ったインディーが再び冒険して「俺はこのために生きてきたんだ。」と活力を取り戻すポジティブな話を期待していただけに、湿っぽい話だったのも違和感がある。
それでもここに残ると言い出す気持ちは分かるし、感動の見せ場にはなっていた。

ジェームズ・マンゴールド監督は名乗りを挙げた訳じゃなく、ディズニーに指名されたんでしょうね。「ウルヴァリン:SAMURAI」、「LOGANローガン」繋がりがあるから。60~70年代が舞台の佳作映画を何本も撮り続けてきた実力を見込まれたんだろう。
この人重厚な人間ドラマは得意だけど、インディー・ジョーンズの持ち味である軽快、コミカルなのは不向きだったのかな~。でも監督は非常に頑張ったと思う。決してそこらの雇われ監督とは違うのは分かっている。

あとプロデューサーに口出しされて無理やり入れた可能性がある要素が何ヵ所か見受けられる。それでまとまりを欠いてる印象がある。
3億ドル近くの製作費かけてこれだからな。やっぱりスピルバーグがやってたらとは考えてしまう。本人でもかなり難しい案件なんだけど。

それでも最後流れるテーマソングには凄い感動と高揚感が。映画館でこの曲を聞けた事とハリソン・フォードの最後の勇姿を見れたことにはとても価値があった。
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