プペ

インビテーション/不吉な招待状のプペのレビュー・感想・評価

2.8
このワンシチュエーションスリラーの極めて優れている点は、″トラウマを癒し、ひとりでは対処できない問題に救いを与える″と称する「カルト」というモチーフを、トリッキーな捻りに都合よく用いるだけでなく、現代におけるリアルかつ切実な問題として扱っていることだろう。
ここ数年、アメリカのインディペンデント映画では「カルト」を題材にしたスリラーがしばしば作られている。
心に傷を負った″正常″な登場人物が助けを求めて「カルト」に関わり、取り返しのつかない事件に巻き込まれる、といった類いの話である。
 
本作の主人公ウィルは「何かがおかしい。とても悪いことが起こりつつある」と、最も鋭敏にパーティの違和感を察知する″正常者″だが、彼は痛切な過去の出来事のせいで情緒不安定に陥っており、今もトラウマ克服の解決法を見出せずにいた。
そんな心が弱りきった青年の目を通して語られる謎めいた映像世界は、終始不確かな危うさが揺らめき、何かの弾みで不測の事態が暴発するサスペンスが渦巻いている。
 

奇をてらわない落ち着いた演出による屋内ロケと、役者たちの演技合戦をベースに、とても丁寧に作られている印象を受けた。
そう、良くも悪くも″丁寧すぎる″のである。
終始纏わりつく不穏な「雰囲気」だけの映画である。
でも、その「雰囲気」こそが、この映画において、製作陣が意図し観客が求めるものであり、それが最高なのだから、「それでええやん」と思う。

ただ欲を言ってしまえば、パーティーの主催者が怪しいのか、それともウィルが精神的におかしいのか、見ている側をもっと混乱させても良かったと思う。
″過去の幻影によって孤独な男が狂っていき凶行に及ぶ話″というのも物語の一つの型として有効のように感じた。


とりあえず私にメガホンを取らせてくれないだろうか?
最高に嫌な余韻に浸れるリメイクを作り上げてみせる。

戯言である。
プペ

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