Kaoru

地中海のKaoruのレビュー・感想・評価

地中海(2015年製作の映画)
3.4
イタリア映画祭にて鑑賞。

もう10年以上前からイタリア映画祭に来ているけれども、上映作品のリストを見て何が悲しいって、ここ近年、移民問題を扱った作品が年々増え続けていることだと思う。
前までイタリアの社会派映画と言えば、マフィアと南北問題の2つが主だったのに…

ブルキナファソという日本では馴染みのないアフリカ大陸の国からイタリアへ命がけで来た2人のブルキナ人のお話だけれども、もしかしたらこれは日本も近い将来に当てはまることなのかもしれない。

ただでさえ、たくさんの人が船旅で命を落とすのに、やっと上陸したイタリアでも過酷な労働条件と地元民とのトラブルで決していい生活は微塵もできない。でも彼らは国で待ってる家族のために簡単に帰ることもできない。日本だったらバリバリ仕事をして遊びや恋愛やそんな自由を楽しんでいる1番楽しい年頃の2人なのに…

同じスタート地点に立った2人だけれど、1人は雇用主に忠実に真面目に働く。一方でもう1人は不満を膨らませ運命に飲まれていってしまう。

郷にいっては郷に従えとは言うけれど、だからと言って誰1人として人権を奪っていい人はいない。郷にいって適応できる人、破綻していく人、そんな人たちを助ける人、侮蔑する人、いろんな人たちがいてそれらをひっくるめて移民問題と呼ぶんだなぁと思わせられる。

イタリアのロサルノという街では数年前にホントに移民たちが反乱し暴動を起こしたことがあり、その様子も描かれていた。

重く辛い作品。だけれども自らもアフリカ系混血のお若い監督がロサルノに住み、出演者のほとんどを友人で固めた監督の熱意が精一杯伝わってきたわ。
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