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皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグの小のレビュー・感想・評価

3.8
1975年に日本で放送され、79年にはイタリアでも放送された永井豪原作のアニメ『鋼鉄ジーグ』をモチーフにした映画。2016年イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞最多7部門を受賞。イタリアでも日本のアニメは人気らしい。

ヒューマントラストシネマ有楽町にて、ガブリエーレ・マイネッティ監督、原作の永井豪先生のトークショー付き先行上映。アニメ『鋼鉄ジーグ』の主題歌を歌った水木一郎さんがサプライズゲストとして登場。一般公開は5月20日から。

コソ泥をして生計を立てているチンピラのエンツォは、ひょんなことから、見た目は変わらないけれど、中身は人間をはるかに超越する頑丈さと力を得る。

世話になっていたチンピラ仲間のオヤジが殺され、その娘で、アニメ『鋼鉄ジーグ』の熱狂的ファンのアレッシアを守っていくうちに正義に目覚めるというお話。

『鋼鉄ジーグ』って何かというと『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』に連なるロボットが活躍する系のアニメ。主人公の司馬宙(しば・ひろし)はサイボーグで、グローブの拳をあわせると、ロボットの頭部に変身。孤児で、主人公と家族同然に育った卯月美和(うづき・みわ)が操縦するビッグシューターから発射される体のパーツと、磁石の力で合体(ビルドアップ)し、巨大ロボットになる。

監督は子どもの頃に見て育った日本のアニメが好きで、数ある作品のうち『鋼鉄ジーグ』をモチーフに選んだのは、『マジンガーZ』など主人公が操縦士となる他のロボットとは違い、主人公もロボットの一部であることと、女の子の協力によって正義の味方ロボットが完成することの2つが理由。

サイボーグのような強さを持ったエンツォが、アレッシアによって正義の味方に変わっていくというストーリーに合致するのが『鋼鉄ジーグ』であると。

映画の内容は、アニメの『鋼鉄ジーグ』をイメージしていると地味で、やや肩透かしで、それほど面白さは感じない。変身はしないし、磁石の力もない。エンツォは決してカッコ良くはないし、アレッシアも魅力的とは言いがたい。

でもそれ故かは良くわからないけれど、人間の成長を描くヒューマンドラマに、下手をすれば荒唐無稽に陥りそうな『鋼鉄ジーグ』というモチーフが上手くハマっている。傑作とまでいかなくても、監督の手腕はナカナカのような気がする。

上映後、監督単独の質疑応答の際に、イタリアの映画事情が聞けた。イタリアでは動員重視の商業映画はほぼコメデイ、作家性重視の映画は一部の大御所を除き、似たような内容になってしまうらしい。そんな状況にとらわれずもっと自由な表現をしたいと、この映画を制作したみたいだけれど、その狙いは成功したと言える気がする。

当日の上映会では、満席にはならなかったものの、永井豪作品のファンを中心に埋まっていた模様。小学低学年の頃、鋼鉄ジーグの合金のおもちゃで遊んだオジサンは当時を思い出し、ちょっと懐かしい気分。
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