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皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグのmayaのレビュー・感想・評価

3.6
女性やクィアの描き方がちゃんと日本をリスペクトしてるだけあって超絶気持ち悪い。
という不快感で観てすぐは「二度と見るか」と思っていたが、後からじわじわ、「いや、永井豪リスペクトだからそりゃそうか!」と思い始めました。主人公含め、登場人物全員が現代イタリアの貧困層で、地べたを這いずる卑しさがある。主人公がスーパーパワーを手にしてまず行ったのがATM強盗で、そのお金で買ったものが大量のAVと主食のカップヨーグルト、というのがすごく良かった。人が持てる「望み」はその人を取り巻く環境の延長でしかない、なぜならそれしか想像できないから。ジンガロの望みが子供時代から成長しないのも、彼の成功体験の少なさがその背景に見える。これらの描写に「持たざる者」のスパイラルを見るし、経済的貧困と精神的貧困の太い結びつきがしっかりと描かれている。
なんとなく全員がどうしようもないところで、抜け出せない業を背負って汚いドブのよどみから突然変異の何かが生まれ、皆がそれをヒーローと呼びはじめる。世界観全体に流れるどんよりとした地獄感。なるほど永井豪だ。これは確かに、戦後日本から生まれた空気だ。だから女は父権社会の暴力の中で都合よく死ぬし、ポリティカルコレクトネスなんて知的精神がこの世界にある方が不自然なのだ。
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