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愚行録のaeuのネタバレレビュー・内容・結末

愚行録(2017年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

思った事を初っ端から思いきり書きたかったので今回は素直にネタバレ設定付けました!

早速!!!

まず冒頭のくだり堪らんですねえ...
『ユージュアル・サスペクツ』だ!!!ってなったし、ちょっと笑った(笑)

しかし解るよその気持ち... 言ってきたおっさんにバツ悪い気持ちにさせたくなるのすっごく解る。まあ愚行ではあるんだろうけどしたくなるよね。

本当に日頃常々思う。他人の事情なんて傍目から見ただけじゃ分からないんだから、それを他人がどうこう度を超えて言うことじゃないんだよなあ。

そもそも手前のお婆さんを立たせてまでさせる事じゃないじゃん、他に譲れる中年の方たくさんいるでしょ、要は正義を盾にして若者にケチ付けたかっただけでしょ。って感じだ。

まあ、田中(妻夫木くん)の方が1枚上手だったんですけどwww


んで、このオープニングのバスのくだりとエンディングのバスのくだりが対になっているわけだ。
これが凄い。

オープニングは「若くて健康そうに見えても実はそうじゃないかもしれないよ」(嘘だったけどw)っていう『人は見かけじゃ分からない』
エンディングは「席を譲ってくれるような優しいひとでも実は殺人犯かもしれないよ」っていう『人は見かけじゃ分からない』

っていうか優先席に座っていて譲らないひとと、席を譲る殺人犯、傍目から見ればいったいどっちが悪なんだろうかって。
(とはいえ優先席のひとが健康な常人とは限らないんだけど、まあ笑って会話させてる感じからして、健康な常人設定でしょう。)
なんか本当もう見せ方が凄いなあこの作品は。

うーん。痺れる。まあ、私の勝手な解釈だけれども、それでも個人的にこういう綺麗にまとまっている感じは痺れる。



そんでストーリーの中身も凄い。

ひとはやっぱり自分の都合の良い事しか話さないよね、たとえ自分の過ちとか恥ずかしい話とか情けない話とかをしてもさ、結局は「こういう出来損なった部分も含めて人間らしい自分」と思えるような、自分で許せるようなところまでしか話さないよね。
他人のことも大した事情を知っているわけでもないのに、それなりの大きさの情報1個2個掴んだ程度で、解ったように解釈してしまう。
自分のことも他人のことも自分に都合良く解釈するし。まあ生きていく為の防衛本能的なやつでそういうふうに脳はできているんだろう。

ヤマモトさんを巡る同期2人の男のあの流れもねぇ...いやあ凄いねえ... どちらかというと女子が思い付きそうな手なんだけど、まあ男の友情ありきの作戦ではあるか。
自分と全く同じ境遇のひとに心許しちゃうの法則とか、このシーンに心理的作戦がいったい幾つ散りばめられているんだろう。
そういう意味でも田向(小出恵介)は賢い男だったんだなあ。



そんでそんで、この一連の取材が初めから全部、恐らく『妹の殺人を証明してしまう可能性のある人間が存在しないかの調査、ひいてはその排除』を目的としていたものだった...ということよね...本当に「田中武志」恐ろしい...!

週刊テラスが「続報」になっていたのも気になるし... この記事を見たりして、また光子の話をするひとが現れればまた消すつもりなのかなって。
たとえば殺されたカフェオーナー宮村の“今でも繋がってる同期の子”とか危なくないですか怖いよ...

「殺人事件なんか起こったって、当事者以外来週にはみーんな忘れてるよ」
なにげないこの言葉も、ちょっとした伏線だったのかなあ。


「似てきたと思いません?」
のあとのシーンでチヒロちゃんの病床シーンというのは、なんていうか。
チヒロちゃんが亡くなった時、もしかしたらホッとする気持ちもあったかもしれないななんて、愚かなことを考えた。
チヒロちゃんが大きくなって自分に似てきてしまったら、あるいはすでに似てきてしまっているのだとしたら、秘密が明るみになるかもしれないから。


ザッとそんな感じかなあ。きっとほかにも色んな事が散りばめられているんだと思うんだけど、1回では汲み取れなかったし、もうちょっと咀嚼してみたい気もする。けれど、

「欲望」や「嫉妬」や「憎悪」
そんな誰しもが持ち合わせているような感情と愚行の数々。
どこでどんな恨みを買っているかなんて分からない。恐ろしくもあるけれど、どこか他人事ではなくて、その辺にありそうな。

そういった、本当に、作品そのものが「田向家夫妻」や「田中光子」を取り巻く世界での『愚行録』なので、ミステリーとしては面白くてあっという間に観られるけれど、決して明るい気持ちになれるような作品ではなくて。とにかく暗い。
もう1度内容把握の為に観たくはあるけど、「また観たいなー♪」という感じではない。

そんな感じでした。
よって再鑑賞優先度的に★3.5には及ばず!完全に好み基準ですね←
作品としては面白い!
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