石川慶監督の長編デビュー作は愚か者たちによるミステリー
ほかのレビューにある通り、登場人物のほとんどが気持ち悪い。特に、男性陣はキモさの役満。終盤のあるシーンでは、その気持ち悪さが実体となって現れる。小さな演出から嫌な感じを示す点がスマート。
「ある男」でも最悪な奴だった眞島秀和はこの作品でもこんなに不快な男を演じていたのか。記憶に残る、本当に素晴らしいパフォーマンス。
田向は劇中でも最も愚かである存在であることが示唆されているが、演じている俳優含め、妙なリアル感がある。善人であろうともしない、かえって清々しいまでのキャラクター造形。
証言から殺された夫婦の実像を映し出す手法はあの小説っぽく、文学的。テーマは深刻だが、あくまで犯人を推理することが中心であるのでミステリーとして観ても普通に楽しめる。しかし、終盤は一転してほとんどホラーで、満島ひかり演じる光子と対峙する恐怖をビシバシ感じる。これを大画面で観てゾワゾワしたいので、ぜひ映画館で観たかった。
