YUKi

愚行録のYUKiのレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
3.5
人は誰でも、大なり小なり
行き場すらない感情や
自分だけが知る事実というものを
内包して生きている。

この作品、そういう人間たちの
各々のエピソードを、会話劇どころか
ドキュメンタリーくらいの分量で語るので
観終えた後の疲労感が‥。

心当たりのある、人(自分も含む)の持つ
嫌な部分を じりじり、じわじわ
これでもかとあぶり出す進行なので
メンタルやられそうになります。

とくにエモーショナルな演出もないのに
なにか得体の知れない壊滅に向かう
緊張感や暗雲が途絶えず。

心の休まるシーンなんてひとつもない。

まさか、からのまさか‥
なエンディングを迎えますが
それもまた苦しみの乗算でしかなく。

息もできないくらいの苦痛に喘ぎ、
絶望でしかない状況下の僅かな希望、
あえて言い換えるなら
歪みに歪んだ愛の形が、ああいう結論を
投げかけてくるとは思わなかった。

妻夫木聡と満島ひかりの演技力が
際立ってたなあ。

序盤と終盤のバスの中でのエピソードが巧い。
最後の最後にあれ持ってくるなんてあああやられた。
‥はい、まだダメージ薄れずです。

1年前に葬られたままの
“幸せを絵に描いたような”一家惨殺事件を追う
ジャーナリストが主人公でありながら、
犯人は誰?どころか、実は世の中って
ここまで計算づくめの嫌なやつばっかりなの?
っていう恐怖感の方が強い。
そんな“後味の悪い秀作”でした。
YUKi

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