ムリッコ

愚行録のムリッコのネタバレレビュー・内容・結末

愚行録(2017年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

この予告編で大体わかる…とか
三度の衝撃はおそらく受けへんやろうなーとか
大体、原作貫井徳郎さんって時点で
ケビンスペイシーが脇役くらいの曲者感、
出落ち感あるねん…とか
色んな想いを張り巡らせながら
「それでも、僕は満島ひかりを見たい」と
二月にしてはあたたかい、
そんな東京の夜、
私は小説を読む前に劇場へと足を運んだ。。。

この映画の面白みは
どんでん返しや犯人の意外性、
ミスリーディングとか
そんな不親切な所じゃないと思う。
むしろ、ほんまにカイザーソゼやん!
っていう親切すぎるくらいのファーストシーン。
とにかくどんでん返しってほどのものはないし
そこを楽しもうと意気込んで行くと
肩透かし間違いない!

終始監視されているような
不気味なカメラワーク。
でも、観終わった直後、その不気味さは
観客側の私たちの中にあるような気がして
非常にミゾミゾし始めるのです。
自分と無関係な他人の事件を野次馬根性で首を突っ込み、解釈して、分かったような気になり、
あーだこうだ評価して…
「あ、でもこれ違うんです。嫌いとかじゃなくて…」みたいな立ち位置不明な臼田あさ美の役に
一番共感する事になる。
(男の人が観たらまた違うのかな)

バスの中の生きている人たちと
田向家の殺された人間たちが
同じように見せられるのやばい!
あのシーンちょっとit followsぽかった。
そして、あらゆる所にガラスガラスガラス。
バス、刑務所、病院、マンション、別荘、
車、浴室、とやたらと何か越しにという描写が多い。人と人との間の膜という感じもするし、
人間そのものの膜、あちら側とこちら側、
インタビューされる者、インタビューする者、
記者、カウンセラー、弁護士…
「あんな感じのいい人たち」「悪魔」
内部生、外部生みたいな極端な分け方をされて行くけど、あらゆる語り手を通して
真実はそこまで単純ではない事も分かっていく。

わりと序盤で犯人がおそらく…って分かっても
ちょっと見返したくなる感じisある。
答えは同じでも、物語がシンプルだからこそ
監督が細かい所に色々忍ばせていたものが
あったのではないかと思わせる。
でも、頭のいい人は一回で色々気付くと思うし、
そのために二回映画館に行くほどでもないかな。

誰かが嘘をついているのではないかーと
疑って疑って見て行くんだけど、
気持ち悪いくらい矛盾なく進んで行くし、
殆どの人が嘘をつかない。
あらゆる愚行、利用し、利用され、
被害者、加害者、でも被害者に見えるあの子も彼も案外図太く生きていく。
どちらが利用されたのか…被害者なのか…
そんな「愚行録」でしたね。

満島ひかりの子供みたいな話し方
それを見るだけでも観る価値はあるし
結果的に映画を先に観られてよかった。
ムリッコ

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