きよぼん

追憶のきよぼんのレビュー・感想・評価

追憶(2017年製作の映画)
3.0
静かに心を動かされる「昭和」の映画。

台詞回し、演出ともに、現在っぽさがない。登場人物の服装や、画面に映り込む街の風景も浮ついたものがありません。物語も壮絶な家庭環境に置かれた3人の家族の話というありがちなもの。

携帯電話が劇中に登場しなければ、これって40年前?昭和?1970年代の映画?と言われても信じてしまいそうです。

しかし、それは「古臭い」という言葉におわっていません。監督の意図はわかりませんが、おそらく意図してこの地味な作りを選択されているのではないでしょうか。そしてこのクラシカルな雰囲気が、この映画の中で示される普遍的なメッセージを届けるのによくあっています。やっぱり味噌汁飲むときは、マグカップじゃなくて、お椀なのよね。

劇中、静かな雰囲気の中で物語につくすような演技をみせる小栗旬、岡田准一、長澤まさみの姿に完動。映画の外の話しになってしまいますが、大ベテランの降旗監督から若い世代への継承というか、日本映画の歴史がつながっていくさまをみているようで、うれしいところです。

びっくりするような映画ではありません。非常にわかりやすい映画です。ある人によっては「古臭い」という一言でかたづけられてしまう映画だと思います。しかし、この時代にこんなクラシカルな話をやりきったという意味では、皮肉ではなく降旗監督は何かを信じて責任のようなものを果たされようとしてるのかな、と思ったりします。映画はマニアだけのもんじゃないしねえ。
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