ツクヨミ

オールド・ジョイのツクヨミのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
4.5
ちょっと特別で小さな休日を遊ぶ非日常感と裏腹に繊細すぎる心情が薫る良作。
ケリー・ライカート監督作品。初見ではちょっとしか感じられなかった本作がまたまたリバイバルしてたので再見してみた。
まず本作は"リバーオブグラス"から10数年ぶりのケリーライカート2作目であり、打って変わってちょっとした休日にキャンプと温泉を楽しむ二人の男友達の話だ。ちょっとした街から車でゆったり移動し森へ森林浴しにいくヒーリング効果がマジでヤバい映像に満ち満ちている。
なんでもないような会話.休日でゆったりと深夜キャンプと温泉に浸かるだけのストーリーの無さであるが、最近記憶に新しいシャーロットウェルズ"aftersun"が如く休日を映す映像とは裏腹に繊細な感情が実は表出する作品である。セリフや友人二人の関わりあいから染み出してくる久々の再会が生み出す昔とは変わってしまった生活や人間感による歪みが痛々しいほど切なく胸を打ってくる、初見では正直わかりづらかった繊細な感情が散りばめられ気づいた瞬間もうその視点でしか見れなくなってしまう切なさよ。ヒーリング効果抜群な映像の表面の裏側にある感情たちにしっかり寄り添ってくれる、だがしかしじわりと染み出してくるのみな絶妙な塩梅に監督の力量が伝わる凄み。
そしてバスドゥヴォス諸作品の如くバチくそヒーリング効果をもたらすyo la tengoのスコアが優しく包み込んでくれるよう。なんとも形容しがたい不思議な世界に連れて行かれる映像にずっと身を任せてしまいたくなる、だがしかし反面もうこの二人は会うことはないんだろうなと映像で物語る繊細な感情。とてつもない要素が絶妙なバランスで紡がれる、映画愛を散りばめた"リバーオブグラス"と比べかなり落ち着きやっと自らの作家性が確立したケリーライカート2作目なんじゃなかろうか。見れば見るほど深みが増すような不思議な停滞したロードムービー、あとライカート監督のリアルペットであるルーシーの存在感がめちゃくちゃ実は凄い、撮影現場であの動きができる犬実はけっこうすごくないすか。
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