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オールド・ジョイのCinemanのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
3.9
『オールド・ジョイ』
ケリー・ライカート監督
2006年公開(サンダンス映画祭)

【Story】
もうすぐ父親になるマークに久しぶりに田舎に戻ってきたカート(ウィル・オールダム)から電話がある。
カートは一緒に一泊のキャンプに行こうとマーク(ダニエル・ロンドン)を誘う。とってもいい温泉場を森の奥に見つけたんだ。

もちろん行くよとマークは答えて車を運転してカートとの待ち合わせの場所に急ぐ。カー・ラジオからはG・W・ブッシュが再選したことを伝えるニュースが流れている。
町でカートと落ち合い彼を乗せて寂れた田舎町を後にして温泉のある山へと向かった。

久しぶりに顔を合わせた二人の会話はお互いの近況報告だ。
カートはヒッピー然としたラフな格好で自由人の雰囲気を漂わせ会話の間もしきりにマリファナをふかしている。
途中迷いながらもようやく森の中にある人気のない小さな温泉場で二人はお湯に浸りながらくつろいだり話し込んだり・・・。
一泊の温泉旅行を終えマークは妻の元に戻りカートはまたどこか放浪の旅に出るのだろう、街をふらふらと歩いていた。

【Trivia & Topics】
*これもまた何も起こらない映画。
全編ほとんど二人芝居のこのロードムービーも淡々とした会話だけで二人の過去と今を推し量るしか無い。

*根っからのインディペンデント。
監督のケリー・ライカートは大学在学中にニュー・ジャーマンシネマの旗手ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの映画を観て「とてもパーソナルな映画でありながら、同時に政治的な一面を持っていて、こんな映画が作ることができるのかと、衝撃を受けました」と語っている。
1994年に長編デビューして以来ライカートは大林宣彦監督も生涯貫いたように女流個人映像作家というネーミングがふさわしい。
各地の映画祭で高い評価を得ている。

*二人の関係
マークも昔はヒッピーにあこがれていたんだろうね。冒頭のシーンでマークが自宅の庭で瞑想していることからもそれは想像できる。
ヒッピーを続けているカートと平凡な生活に落ち着いているマークの再会ロードムービー。あれから君はどうしていたの?

*人には勧めません。
個人映像作家に興味を持てない人には彼女の作品を勧めません。
映像は美しく、長回しを多用し、じりじりするほどカット尻が長い彼女の演出のテンポに興味のわかない人には「何だか退屈」な映画にしか見えないからです。

*好きなのかと問われたら。
ケリー・ライカート監督を好きかと尋ねられたら「決して好きではないし面白い映画とも思わないけれど淡々として綴られている彼女の映画にはなにか目を逸らさせないものがあるので観ているんだ」と答えるしかない。☆☆☆☆だから面白い作品だというのではなく興味をひく作品ですという意味だ。つまらなくはないし平凡な作品でもないからね。

【5 star rating】
☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:見事な作品
☆☆☆☆ :面白い作品
☆☆☆  :平凡な作品
☆☆   :残念な作品
☆    :退屈な作品
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