社会ニュースを伝える車内ラジオが消え、山々の車窓を背景にヨ・ラ・テンゴの軽やかなギターメロディーが流れだした瞬間に、この映画に惚れた。都会から自然への滑らかなイントロダクション。
最近見た『ファーストカウ』同様、おじさん二人の友情物語。
友情、という表現は的確じゃないかもしれない。今まで疎遠だった二人が、二人きりで山奥の温泉を目指してドライブする。
道中の二人の絶妙な距離感。基本、仲は良いけどドラマチックな展開が起こるほど深い仲ではない。カートは俺たちは友達なのか不安だ、と本音を吐露する。
温泉で裸のカートがマークの肩をおもむろにもみだし、マークの結婚指輪をした左手がゆっくりとお湯の中へ沈んでいく、みたいな意味深ショットもあったが、(多分)何も起こらず。
キャンプを終えて都会に戻ってくる、社会ニュースのラジオも復活する。
二人は別れ、カートは路上をうろつき、マークは妻の待つ家に入るのを躊躇うかのように車の中でじっとしている。
カートとマーク、マークと妻の名状しがたい関係性の現状を描き、そこに過剰なドラマを持ち込まない。そこが好き。
