寝木裕和

オールド・ジョイの寝木裕和のレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
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この作品の主たる登場人物、マークとカートは久方ぶりに再会するのだろう。
しかしながら古くからの友人で深いところで理解し合っている… と同時にお互いのいろんな部分を分かってしまっているゆえに煩わしく思う気持ちも僅かにあることが見える。とくにマークがカートに対して。

そんな、まるで幼少時代の親友のような二人とは違うのだけれど、この作品を観て、以前 ふとしたことで気まずくなってしまった友人と銭湯に行った時のことを思い出してしまった。

サウナから上がって水風呂に二人無言で浸かっているとき、一人で入るよりも銭湯の天井から湯船に落ちる水滴の音が妙に響いていたっけ。

この作品の中でも、人里離れた所にある温泉に二人で入っているとき、野鳥がさえずり大きなナメクジが静かに苔の上を這う、あの印象的なシーンは同じように二人の緊張感を漂わせていて。

「哀しみは、使い古された喜びなんだ。」

二人が別れて現実社会に戻っていった最後のシーンに、いつまでも頭に残る風呂場の水滴の音のような寂しげな余韻を感じ、胸が少しぎゅっとなった。

ルーシーの演技がとってもキュートで、抱きしめたくなってしまう。
寝木裕和

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