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オールド・ジョイのKengoTerazonoのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
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色味が好きだった。
緑、黄色、赤、青がほとんどの画面を占めている。ほとんどの舞台である山(緑と青)から逆算してるのかな。
マークがカートの家の2階バルコニーで彼の帰りを待っている時、前景がカートの家の黄色、後景が街路樹と、向かいの家の壁面の緑、そして後景に俯瞰で捉えられたカートは青い服を着て黄色いテントをワゴンに乗せている。このショットが色分けが顕著に表れていて印象的だった。

車内のシーンが多いこともあってかクロースアップがめちゃくちゃ多かった。ピントが近すぎてあっていないこともあるくらい、迫ることにためらいがない。クロースアップによる視線の往復、見る/見られるの往復が厳密になされているかと言われると、縫合が霧散することもある。ガソリンスタンドのシーンでは、マークのクロースアップののち、カートと犬が戯れているショット、続けて複数人の女性が店の前でたむろしているショットが提示される。最後の女性たちのショットはマークの眼差しっぽいけど、その後のショットが買い物終わりのマークとカートでジャンプしているからそういうわけでもなさそう。

後景から人物が歩いてショットサイズが大きくなるにつれてティルトアップするキャメラワークが多い。その時、ピントが合う範囲より合わない範囲の方が大きい時もある。

温泉へと歩いていく往路のシークェンスでは、ショットサイズやアングルがリズムを刻んでいるような編集になっていてよかった。

往路と復路が非対称的であったことが印象的だった。
行きはあんなに緑や青でいっぱいだったのに、帰りはコンクリートの街並みがメインになる。まるでマークがホモソーシャルの自由さから父親へと社会化されるかのよう。
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