まいす

オールド・ジョイのまいすのネタバレレビュー・内容・結末

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ライカート作品は『ファースト・カウ』に続いて2本目。アマプラで鑑賞。

全体を通すと、我々の身の回りにあるような凡庸で致命的なことが進んでいくロードムービーの体で、監督のうまさが滲み出ていると感じたけども、それがまた鼻につく印象があっり好みのアウトプットではなかったので、それで個人的な評価は下がるが、全体としてはほんとうにうまかった。

マークは、相手が望む形に適応してやさしく振る舞うが、それは処世術であってドライな印象。一方でカートは、自己のアイデンティを見失いつつ、マーク対して焦がれるような友情と愛情をもち、困難な生活の中で「何かをうまくやっていくためにマークに昔のように受け入れてもらう」ことで全てが短絡的に解決するんじゃないかと思っているフシがある。そして彼は優しく、気持ちもウェットだ。

物語では、そこにルーシーというメスの犬が同行することで、マークとカートの温度差で越境が起きないよう機能している第三者の視点を携行したように思える。作者の姿でもあるのかもしれないけれど。

そのルーシーは、温泉への山道を歩く際に、丸太の橋を渡るか渡らないかを逡巡して、結局渡っていくのだが、その後に温泉についた際にどこかに散策に行ってマークたちから離れてしまったことで、カートの中で攻める決意が生まれ、マークは性質として受け入れざるを得ない。

マークにアクションを起こす決意をした時に鳥が飛び立つカットが挿入されるのが(冒頭と温泉)、若干あざといけどうまいなあと感じた。

レストランでのオーダーの差異(トーストをマークはドライ、カートはウェット)も2人のお互いへの心情を代弁しているんだろうなあ…

2人の友情の顛末は、普遍的で平凡だからこその魅力と説得力があり、そこに社会情勢によるプレスが加わって… という絡め方がうまいと思うと書いていたら、キャンプに行ってギュッとしたホットサンドを焼いて誰かと食べたくなった。
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