ミーハー女子大生

彼らが本気で編むときは、のミーハー女子大生のネタバレレビュー・内容・結末

彼らが本気で編むときは、(2017年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

題材は良いが・・・

母親の愛情を心底欲しているがそれを受けたことがないトモは母親の愛情がどんなものなのかさえ知らずにいる。
いつも食事はコンビニのおにぎり。
ゴミ箱はおにぎりの包装ビニールでいっぱいだ。

無責任な母親は、ある日娘に置き手紙を残して家を出て行く。
娘はパニックを起こすでもなく冷静に振る舞い叔父のマキオもとに向かう。
母親の家出は初めてではなく、マキオも職場に出向いた姪を見てすぐに状況を悟るのだった。

そしてマキオは快くトモを受け入れ、同棲中の性同一性障害であるリンコとの3人の共同生活が始まる。
その後の展開は、母性を求めるトモと母性に目覚めたリンコが互いの距離を縮めて行く様子が丁寧に描かれる。

食卓を囲んで食べるごはん、初めてのキャラ弁、編み物、トモにはどれも新鮮な出来事であり、母親の愛情に枯渇しているトモの心を家庭の温もりが癒していく。

作品のタイトルにあるように、編み物は3人にとって重要な意味を持つ。
108個の煩悩に見立てて編むアレは面白い発想だし、3人並んで編み物をする姿は可愛らしくてホッコリする。
煩悩を燃やす儀式も微笑ましい。

戸籍上の家族になりたい一心で108個編む目的を果たしたわけだが、この3人はその過程で既に家族になっていた。

しかし間も無く別れが訪れる。
最後にリンコがトモに送ったモノは感動的だ。
おそらくリンコ自身が母親からもらった中で最高のプレゼントであったであろうものを、今度は自分が母親としてトモに送ったのだ。

作中でリンコはトモが可愛くてたまらないと言っていたが、その気持ちを最大限に表すプレゼントだったと思う。
こんなに素敵な物語なのだが、私はあまり気持ちが入らなかった。

この作品の最大の見どころは、やはり生田斗真が演じるリンコの仕上がり具合だろう。
女性らしい所作、優しさが溢れた表情、声のトーンなどは素晴らしかった。
しかし、体型を隠したいのか不自然な昭和風ワンピースはあり得ないし、筋肉質な肩幅はどうしても隠せない。

私の勝手なイメージではあるがこのリンコには今ひとつリアルさが感じられず「女装」感が主張しすぎで違和感があった。
演技力は十分なのに勿体無い。
もっと過酷な減量をするなり外見を完璧にしてほしかった。

それからリンコはまるで天使のように美化され過ぎて親近感がわかない。
同僚はガサツな言葉使いで上品なリンコを引き立てる。
リンコの入院先の悪徳看護師もまたしかり。病院の体制を批判するために看護師個人を悪役にする必要はない。
あんな非常識な口ぶりはやり過ぎだし、むしろ悪意さえ感じる。

男性部屋の隅っこで居心地悪そうにニッコリ笑うリンコには誰もが同情することだろう。もっともこんな病院があるのなら早急に改めるきだが。

さらに、同級生の母親が反面教師的存在として登場するのだが、同級生が服薬自殺未遂まで起こすのはやり過ぎ感が否めない。
物語の主軸ではないからと受け流すにはあまりにも事が大きすぎる。

全体を通して、 リンコの外見も必要以上に美化された人間性にもリアリティーが感じられず。
題材は良いが、観客の思考を誘導する意図が見え過ぎているのが欠点かな。

ストーリー 3
演出 3
音楽 3
印象 2
独創性 4
関心度 2
総合 2.8