あなぐらむ

ズームイン 暴行団地のあなぐらむのレビュー・感想・評価

ズームイン 暴行団地(1980年製作の映画)
4.2
黒沢直輔第一回監督作品。
桂千穂のぶっとび脚本を得て、郊外の団地を舞台に起こる連続暴行放火事件(女の股間に火を放つ)をショックシーンと豊富な絡みを細かいカットで繋いで、スピードとサスペンスの中で見せきる見事なデビュー戦。

炎に託された情念と、パンチの効いた恐怖描写にみな驚く筈。ホラー好きにオススメな猟奇ロマンポルノだ。どんな風に展開するか全く分からない怖さ、その後のJホラーに続いていく、集合住宅の持つ薄気味悪さを既に描ききっている。

ヒロインはスレンダーかつエレガントな宮井えりな。レズシーンもこなし、絡みをほぼ一人で背負う。片桐夕子がご祝儀出演。80年代ロマンポルノは女性の不安と孤独、熱量の低い冷めて渇いた空気が漂う。終盤の妊婦のショックシーンは強烈で思わず息を呑む。

「ズームイン」とは当時人気だった「ズームイン!朝」を拝借したものと思われる。流行語をタイトルにするのを成田尚哉さんが企画で出してた頃で、「ズームアップ 暴行現場」もあってその流れでついたタイトルだろう。日活はタイトルからブレイクダウンして作品を作る形だった。

黒沢直輔は小沼勝、小原宏裕監督の助監督を務めており、そこで学んだものと自身の炎や水(雨)に対する映像センス、赤と青といった色彩による表現は加藤彰的でもある。本人が一番の映画的な影響を受けたと話しているのは鈴木清順。ここにも日活の遺伝子がある。