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ドラゴン・タトゥーの女のMyonのレビュー・感想・評価

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)
3.8
Opの映像と移民の歌(女声カバーっていうのもまた乙)から、スウェーデン版とは一味違う作風なのだという気概を感じた。実際本編もスタイリッシュな仕上がりで、地道な社会派ミステリという印象は薄れた。登場人物の魅力によって牽引される一種のキャラクター映画としての再誕を果たしたとも言えるかも。

リスベットはある事件を起こしたことで精神異常者として侮られ、成人しているのに後見人が付けられている。職場の雇い主と以前の後見人だけは彼女の能力を理解してくれていたが、新任は…。そんなリスベットの新たな理解者ミカエルは色男になり見せ場も増えている。

ハリウッド版の難点は続編で大きなウエイトを占めるリスベットの過去描写が少ないことと、いくつかのシーンでの彼女の人間性の解釈。オリジナル版は強靭さにくるまれた女性らしさが、本作では「キレると怖い恋するジーニアス」感が魅力。この辺はどちらも良いので置いといて。

本来この作品の性・暴力描写はスウェーデンの社会背景に裏打ちされる筈が、それを省いたせいでただ嫌悪感や倒錯感を煽るものになってしまった。
「女を憎む男たち」という原作の副題からわかるように、当国の女性に対する暴力は欧州全体でも特筆すべきものであるそう。それらと戦うため、どんな誹りを受けても自身の確固たる理念を振りかざす彼女に人々は共感するのだと思う。芯の強い人間として行動する彼女を描いて欲しかった。ルーニーの役作りと演技は素晴らしいだけに残念。ある意味もう1人のヒロインたるハリエットの改変も終盤のカタルシスを台無しに。

散々文句は言ったけど続編には超超期待してます。
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