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ドラゴン・タトゥーの女のEikeのレビュー・感想・評価

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)
3.3
メガトン級の世界的ベストセラーをアメリカ映画界が放っておくはずもなく、その意味では出るべくして出たハリウッド版。
脚本(スティーブン・ザイリアン)も演出(デビッド・フィンチャー)も一流どころを揃えている辺りは本気がうかがえました。

原作を読んだ身からすると本作は「良くまとまった」感が強く、心配していたよりは上出来。
というかほとんど原作を動かさず(若干の改変あれども)主人公たち(ミカエルとリスベット)が出会うのも全体の半分過ぎてからという辺りを踏襲している辺りは潔い。

しかしそうはいってもやはり原作と比較すると2時間半あっても、端折った感は否めません。
特に原作ではヴァンゲル家を巡る物語とほぼ同列に描かれる雑誌「ミレニアム」のジャーナリズムを通した戦いの側面が映画ではあくまで背景に落とし込まれている点は少々物足りない。
まぁ、映像化としては無理ないかなとも思いますけどね。

過激なヴァイオレンスやエロチックな描写も原作に忠実ではあるのですが、この部分についてはやはり映像化されるとちょっと殺伐とした雰囲気が増しますねぇ。
ハリウッド製の洗練されたサスペンス映画を期待して劇場に来られた(原作を未読の)方は少々引き気味であったような気もしますけど。

フィンチャー監督としては「Se7en」以来の本格猟奇サスペンスだったと言う気もしますがさすがにその部分は手堅く魅力的にゾクゾクさせてもらえました。
ハリエット消失の謎の解明に徐々に近づくミカエルとリスベットの前におぞましい連続猟奇殺人の闇がポッカリと広がっている事が分かるあたりの戦慄感。

雪と氷に閉ざされた北欧の島の白と黒のコントラスト。
常にだれもが凍えているかのような風景描写が心地よく緊迫感を高めていて舞台をスゥエーデンから(例えばカナダとかね)変更しなかったことは大正解でしたね。
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