翔

ドラゴン・タトゥーの女の翔のレビュー・感想・評価

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)
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ある経済記者の男と、男性に虐げられてきた過去を持つハッカーの女が、協力してある事件を解き明かそうとする話。

 フィンチャー監督の「ソーシャルネットワーク」は、世界規模に成長した企業のストーリーを通じて、個人の生き方について問いかけるような映画だったのに対し、本作では、資産家一族のいざこざとそこに介入する二人のアウトサイダーという狭い世界を描くことで、男性優位の社会に対し疑問を投げかけるという内容になっている。構図としては「ゴーンガール」に近しいものを感じた。
 話の大筋は二人が協力して、一族の闇を暴いていくという流れだが、序盤からこの謎解きに取り組んでいたミカエルに対し、映画後半に差し掛かるかというところで、ようやくリスベットがアシスタントとしてメインとなる舞台に登場する。それまで、リスベットは解決しなければならない問題と戦っていた。これは、被差別者が社会に同等に扱われるまでのハードルを示しているのではないだろうか。差別を受けたことがない人間が想像しがたいその過程を視覚化したというところがこの映画の編集の良さだと思う。
 事件を解決していく過程で、ミカエルとリズベットの関係性が変化してゆくのも面白かった。当初、半ば強引にリズベットの自宅に押し入り、協力を要請したミカエル。困惑気味だったリズベットは徐々に手腕を発揮し始め、ミカエルの命をも救う。ラスト、二人の関係性は切ない終わりを迎える。しかし、そこはさすがのリズベット。瞬時に切り替え、愛車で闇に消えていく。二人の年齢差を考えると、あの別れは正しかったようにも思え、ある意味では気持ち良いエンドかなと感じた。
翔