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さすらいの航海のmhのレビュー・感想・評価

さすらいの航海(1976年製作の映画)
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独英開戦(1939年9月)よりも前の1939年5-6月、ユダヤ人難民を乗せたドイツの客船セントルイス号の乗客がキューバに入国できず、海の上をさまよう話。
船長をはじめ人道的なクルーが少数で、ごろつきみたいなナチ党員のクルーがいっぱいいる状態。クズ過ぎるナチ党員にリアリティはないんだけど、映画の悪役にはちょうどいい極悪っぷり。
陸の上では、難民を受け入れてもらうべく、ユダヤの政商人が奔走している。
ドイツに戻ってしまったら、再び強制収容所に入れられるので、自殺するヤツ、自傷するヤツ、艦橋をジャックするヤツ、様々な反応のいちいちがリアル。
特に、女性が髪を切るのが強烈だった。
故意に座礁してイギリスに救助されようとしたオーラスに一転してハッピーエンド。
受け入れてもらうことが確定するんだけど、次の瞬間にはフリーズフレーム+テキストスライドで、登場人物たちのその後があきらかになる。テキストスライドは容赦なく次々に出ては消える。そこに「アウシュビッツ」の文字があるのを見て、こちらは手足が冷たくなるようなすごい余韻を体験することになる。
オールスターキャストなので、役者さんの存在感だけでも楽しめるやつでもあった。
見たのは2時間37分のバージョンだった。
時系列ではこの映画のあと、WW2開戦後・ラプラタ海戦(1939年12月)を扱った「戦艦シュペー号の最後」でも、入港できるできないがプロットになってた。
ユダヤ人は関係ないけど、戦時中ドイツの客船グストロフ号が起こした史上最大の海難事故を扱った映画「グストロフ号の悲劇」。
ユダヤ人難民船を題材にした戦後のバージョン「栄光への脱出」なんかもあわせて見たら面白いと思った。
ドイツの客船ものはどれも見応えがある。
これもいい映画! 面白かった!
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