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エル ELLEのmayaのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
5.0
ヴァーホーヴェンの描く女ほど、全く掴めない女、他で見たことない。私は女性なので、大概映画の女性キャラクターが観察のもとで描かれているか、記号的に作られたかの見分けは簡単につくのだけど、ヴァーホーヴェンだけは毎度新しい視点を提示される。「自分の中でそういう秩序立てをして行動を説明したことなかったから気づかなかったけど、ヴァーホーヴェン観てから自分の行動規範を見ると、合ってる...」という恐怖体験をする。ヴァーホーヴェン、なんでそこまでわかるの!??
無秩序で、逸脱ではなく最初から違うルールで生きている。自由なわけではないし、サイコパスというわけでもなく、ただ生身の社会に生きる女であるままにエゴイスティックなので、どうやったらこんな女が描けるようになるのか...
同性愛を異性愛のカウンター、ひいては家父長制のカウンターの一機能として取り上げるすべての創作者に、ヴァーホーヴェンに学べと言いたい。
そしてベネデッタ...!!!最後のご近所2人の会話が、天使と悪魔の対峙に見えて、大変胸熱だったし、終わりも最高だった...
これだけ人物の描き方で脱構築に成功している近年数少ない作品、フィルマークスのレビュースコアは低いし、コメントも「え、よくわかんなかった笑」みたいなのばっかりなので、やはりランキングやポイント評価で映画観るのは無意味だなと実感する。いや、むしろ脱構築に成功すると、大半の観客の評価ってこうなるんじゃないだろうか。観客が見て、その場で感動して、即座にクソデカ言葉で感想を喚き散らせる即効性エンタメも、すごいはすごいけど、やっぱり一歩足りないし、消費したらすぐ忘れてしまう。が、本作のような映画は逆に、「いや、わけわっかんなかったけどなんか頭に残ってんだよな...」と思って何年か越しに、「あっ」と思う瞬間が訪れたり。それこそが本当に価値ある映画体験だと思うんだけど。
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