現在もランドスケープ・デザイナーとして活躍中のメアリー・レイノルズが、史上最年少で世界最高峰の「チェルシー・フラワー・ショウ」の金賞を勝ち取る物語。
本作は、一見すると、実績はないものの、才能溢れる若き女性が、世界最高峰のフラワー・ショウに参加するために、様々な困難に立ち向かい成功するという、日本の配給会社が、作品を売るために意図的に強調したサクセス・ストーリーではあります。
…確かにサクセス・ストーリーではありますが、本来のテーマは、ちと違うように感じました。
メアリーは、アイルランドの何処か寒々しいながらも豊かな自然の中で育ち、自然本来の姿が美しいと思い、自然と人との調和を大切にしているように思います。
フラワー・ショウに出品されている作品や庭園は、確かに華やか且つ豪華で美しく、見る者を魅了しますが、それはショウで勝つ為に草花が持つ本来の姿を排除し、デザイナーが意図するデザインの型に無理矢理はめ込んだ、人工的な美しさと言えます。
メアリーは、ショウに出品するに当たり、原題でもある"敢えて野生になる"事をコンセプトに草花を本来あるべき、自然の姿で表現した庭園を作るというかなり挑戦的というか、ショウに対して喧嘩を売る主張をした事になります。
また、物語の中盤では、やや長めの尺で、エチオピアでの砂漠緑地化運動についてのエピソードが続きます。
これは、物語の本筋からは関係があるかと言えば、余り重要性は無いのですが、メアリーの信条である"残された物は守り、失った物は再生する"の最たる存在なので、本作では最も重要なエピソードなのだと感じました。
ほとんどの人は、環境問題について重要なのは分かりますが、殊更、声高に言われると"胡散臭い"と拒絶しがちですし、何より目先の利益に目が行きがちです。
途中、エチオピアにオアシスを作る資金を寄付するという話を持ちかけられるシーンがありますが、これも真摯に緑地化問題に取り組みたいからでは無く、会社のイメージアップに繋がるからと打算的です。
メアリーが作った庭園は、本来、フラワー・ショウの趣旨とは異なるのですが、流石、伊達に100年続いている大会ではありません。
審査員は、公平に審査し、メアリーは金賞を受賞します。
結果発表のシーンは、映画的に一番盛り上がる所ですが、意外とあっさりとしています。
それよりも、受賞後のパーティで、金賞を取りながらも招かれなかったメアリーのエピソードが印象深く描かれていて、メアリーの立ち位置を深く理解する事が出来ます。
サクセス・ストーリーのスタイルを取りながら、メアリー・レイノルズが考える環境問題、自然と人間の在り方を表現した作品なのですね。
テーマはどうあれ、ショウに出る為に頑張るメアリーの姿は、見ていて楽しいです。
私は、緑の美しさと、画面から草花や土の匂いを感じ癒しの時間を貰いました。