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動物農場のKUBOのレビュー・感想・評価

動物農場(1954年製作の映画)
4.0
【『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』を鑑賞する方には、本作を併せて鑑賞することをオススメします】

これは興味深い作品でした。全くもって大人向け。キャラクターだけはかわいい動物たちだが、テーマ、ストーリー共に子どもに見せることを想定してるとは思えません。

ジブリの宮崎駿が発掘した作品で、2008年にスタジオジブリが配給して公開された、なんと1954年のイギリス作品。原作は「1984年」のジョージ・オーウェルで、支配階級と労働者の問題を、労働者たちを「動物」に置き換えて描いた寓話だ。

人(動物)使いの荒い農園主を追い出して、動物だけの平等で平和な「動物農場」を築いた動物たちだったが、その共同体の中にも「指導者(ブタ)」が現れ、動物農場はどんどん支配層(ブタ)と労働階級(馬、牛など)に分かれ、圧政が布かれていく。指導者の肖像画が壁に掛けられ、支配層の決定に従わない者には死が待っている世界。耐えに耐えてきた労働階級の動物たちは、ついに立ち上がる。

ジョージ・オーウェルがソ連の社会主義に対する警笛を鳴らす目的で書かれた小説だけに、メッセージはストレート。このアニメーションには、当時のCIAが出資していたのは事実らしいが、理想を求めて社会主義の農園を作ったが、それでも内部に独裁的な支配層が形成されてきて社会主義が崩壊していく様はリアルで興味深い。想定は「対 ソ連」の作品だが、壁に掛けられた指導者の肖像画が、北のあの人のように見えて仕方がなかった。

時代は私がまだ生まれる前の第二次大戦後10年ほどの時代だが、庶民の置かれている立場は驚くほど変わっていない。反共産主義のプロパガンダのために作られたアニメではあるが、戦後資本主義もその方向性を誤り、一部資本家だけが巨万の富を抱えている世界を助長しただけだ。アニメーション技術は同時代のディズニーには及ばないものの、今、この時代に見る意義は大いにある。見られてよかった。
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