数ヶ月前に観たのに、ずっとレビューを書けていなかった作品。
一言で言えば、いい映画だった。
映像作品を観るときって、例えばジリジリとひりつくような緊張感だったり、鮮やかな映像への没入感だったり、このシーンの！この音楽が！このアングルが！みたいな面白さを楽しむ部分があるじゃない。でもこの作品は、そういうものとは対極にあると感じた。
淡々と流れていくシーンの中で、何が起こったのか、この登場人物達にはどういう背景があるのか、どういう関係なのかを自然に、時間を割いて丁寧に描写していくやり方は好きだった。
いまのシーンの中に細かく過去のシーンを入れてくるのも、"過去と今は地続きである"ということ、もしくは主人公の中には常に過去の思い出が流れているということかなと解釈した。よかった。
人が人を見る目に、気遣いや優しさ、哀れみなど色々な感情が乗っているのがよく分かって、この監督はいい撮り方をするな。演技が皆自然で良かった。人に優しく出来る人になりたいと思った。
辛い出来事・自分の取り返しのつかない過ち・後悔、そういうものを抱えて、でも生きていく。絆の話でもあるかなと思った。それを甘すぎず辛すぎず説教くさくならずに描き切っているのは素晴らしい。
観ながら2回泣いた。最初と最後の船のシーンがとても好きだった。観て良かった。
